今日の診療
治療指針

悪心,嘔吐
nausea and vomiting
伊原栄吉
(九州大学大学院准教授・消化器代謝学)

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治療のポイント

・医療面接,身体診察および各種検査を行って,悪心・嘔吐の原因を同定する.

・悪心・嘔吐の原因治療を第一に考える.

・悪心・嘔吐が改善しない場合,病態に応じた制吐薬の投与を行う.

◆病態と診断

A病態

・悪心は胃内容物を吐き出したいという切迫した主観的症状であり,嘔吐は客観的所見として胃内容物を食道,口腔を介して排出することである.

・嘔吐に関係する中枢は,延髄網様体中の迷走神経背側核付近にある嘔吐中枢と第4脳室底にある化学受容体誘発帯(CTZ:chemoreceptor trigger zone)である.

・嘔吐中枢は,消化管を中心とする内臓臓器からの求心性迷走神経による刺激,脳疾患による直接刺激または前庭系の異常によって活性化される.CTZは,代謝異常・内分泌異常に伴う化学物質の刺激によって活性化される.

・患者の各原因に応じた随伴症状を伴うことが特徴である.

B診断

・中枢性か末梢性かを意識しながら原因を同定する.

医療面接を行って病歴情報を聴取する.悪心・嘔吐症状の発症時期,発症形式,既往歴,加療中の基礎疾患,心理社会的要因の有無を聴取するとともに,自覚症状としての随伴症状を聴取する.

身体診察を行って,脳疾患,耳鼻科疾患,循環器疾患,消化器疾患および内分泌疾患などの原因疾患を鑑別する.

・尿検査,血液一般検査および血液生化学検査でスクリーニング後,頭痛,胸痛,上腹部痛,下腹部痛,背部痛などの随伴症状に着目して,脳疾患および耳鼻科疾患(頭部CT/MRI,平衡機能検査),循環器疾患(心電図,胸部単純X線,心エコー),消化器疾患(腹部単純X線,腹部エコー,腹部CT),内分泌疾患(各種ホルモン値測定,負荷試験)を鑑別していく.

・くも膜下出血,脳内出血,急性心筋梗塞,大動脈解離,特発性食道破裂,消化管穿孔など,超緊急性を要する可能性があることを念頭におく.

・妊娠可能な女

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