今日の診療
治療指針

むねやけ,げっぷ,もたれ感
heartburn,belching and dyspepsia
磯本 一
(鳥取大学教授・消化器・腎臓内科学)

GL胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂第3版)

GL機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD)改訂第2版

治療のポイント

・プライマリ・ケアとして,丁寧な問診と医師-患者の信頼関係が前提となる.

・むねやけ,げっぷ,もたれ感は,機能性疾患・器質性疾患いずれでも生じる.

・機能性疾患を疑い酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬で治療を開始した場合は,4~8週を目処に治療効果を判定する.

・警告徴候(高齢での新規症状出現,体重減少,再発性の嘔吐,出血,嚥下障害・嚥下痛,腹部腫瘤,発熱,食道癌や胃癌の家族歴)がある場合は,上部消化管内視鏡検査などを実施する.

・食道内圧測定やpHモニタリングなどの機能検査の必要性や評価については専門医にコンサルトする.

◆病態と診断

むねやけとは,胸骨の後ろに感じる灼熱感のことをいう.

・基本的には食道括約筋の機能低下により酸度の高い胃液が食道に逆流して生じる病態であるが,食道の感受性が亢進しており,少量の胃酸や非酸の逆流により発症する逆流過敏性食道や,逆流と関連しない機能性むねやけもある.精緻な診断のための食道pHモニタリングや食道内圧検査の評価には専門性を要する.

げっぷは噯気ともいわれ,貯まった空気が口から出てくる生理現象であるが,長期あるいは頻回に起こる際には上部消化管内視鏡検査や耳鼻科のコンサルトを行う.

もたれ感は胃から十二指腸の排出障害により胃が重く感じられる症候で,食後の膨満感や食べ始めの早期満腹感がある.器質的疾患以外にも,過敏性腸症候群や慢性便秘症などを併発している場合もある.

◆治療方針

A初期治療

 警告徴候を有しない場合,初期治療として酸分泌抑制薬や消化管機能改善薬を投薬する.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)ボノプラザン(タケキャブ)錠(10・20mg) 1回1錠 1日1回 朝食後

2)エソメ

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