頻度 割合みる
治療のポイント
・TACEは多血性の肝悪性腫瘍に対して有効な治療であり,中期肝細胞癌に対する主要な治療手技である.
・マイクロカテーテルを担癌区域または亜区域動脈枝まで進めて選択的TACEを行うことが,治療効果の点からも肝予備能温存の点からも推奨される.治療支援装置は栄養血管の同定に有用である.
・症例に応じてリピオドールを使用するLip-TACE,薬剤溶出性球状塞栓物質(ビーズ)を使用するDEB-TACEを使い分ける.
◆病態と診断
・TACEの対象となるのは多血性の肝癌で,血管造影では腫瘍濃染を認める.
・肝臓には肝動脈と門脈が流入するが,肝癌は主に動脈から血流を受けるのに対し,非癌部は動脈が30%で残りの約70%は門脈より血流を受ける.この二重支配があることで肝動脈を塞栓して腫瘍を壊死させても周囲の肝臓へのダメージは比較的少ない.
◆治療方針
「肝癌診療ガイドライン2021年版」ではTACEは「腫瘍個数4個以上もしくは1~3個で腫瘍径が3cm超,Child-Pugh分類A~Bで,手術不能かつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞癌に対する治療法として推奨する」とされている.しかし3cm以下,3個以内の腫瘍でも存在部位,患者の状態や肝予備能によってはTACEが選択される場合もある.前述のようにTACEを安全に実施するには門脈血流が重要であり,門脈本幹閉塞症例は禁忌となる.
ATACEの種類(Lip-TACE,DEB-TACE,B-TACE)
TACEは使用する抗癌剤や塞栓物質,塞栓の方法によりさまざまな種類がある.リピオドールと抗癌剤の混合液を注入後に多孔性ゼラチン粒で塞栓する方法をリピオドールTACE(Lip-TACE)とよぶ.これに対して薬剤溶出性ビーズを使用する方法をdrug eluting beads TACE(DEB-TACE)とよぶ.いずれの方法でもカテーテ