今日の診療
治療指針

アルコール性肝障害,アルコール関連肝疾患
alcoholic liver disease,alcohol-related liver disease
堀江義則
(慶洋会ケイアイクリニック・院長(東京))

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ニュートピックス

・アルコール依存症の治療薬として,オピオイド受容体調節作用を介して飲酒欲求を抑えるナルメフェンが本邦でも承認され,2021年11月からは厚生労働省が認可したeラーニングを受講することで薬剤料算定もできるようになり,飲酒量低減治療の選択肢が増えた.

治療のポイント

・治療の基本は飲酒量低減・断酒である.

・初期の段階では,簡易介入による心理社会的治療が重要である.

・重症アルコール性肝炎の場合は,早期からの薬物治療開始が推奨される.

・肝硬変に至るような症例であっても断酒の治療目標を受け容れない場合は,飲酒量低減を当面の目標として治療を進める.

・飲酒量低減治療を継続しながら信頼関係を築くなかで,本人の意思で専門医療機関受診や断酒してもらうことが望ましい.

 欧州肝臓学会(EASL)では,そのガイドラインにおいて,「alcoholic」という用語は患者の尊厳や自尊心を傷つけるものとして,従来のalcoholic liver disease(アルコール性肝障害)に対してalcohol-related liver disease(アルコール関連肝疾患)という用語を用いるようになった.米国肝臓学会(AASLD)でも,alcohol-associated liver diseaseに変更されている.

◆病態と診断

A病態

・長期にわたる過剰の飲酒(1日男性60g,女性40g以上)が肝障害の主な原因と考えられる肝疾患である.欧州では,1日男性30g,女性20g以上の習慣飲酒を伴う肝疾患は,アルコール関連肝疾患と定義されている.

・脂肪肝は,多量飲酒者のほとんどに認められる.さらに大量飲酒を繰り返すと,アルコール性肝炎が発症する.長期に多量飲酒をすると,アルコール性肝線維症からアルコール性肝硬変に至る場合がある.

B診断

・問診による過剰飲酒の確認と,禁酒による肝逸脱酵素の改善の確認

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