今日の診療
治療指針

原発性・転移性肝腫瘍(内科)
primary and secondary liver tumor(medical treatment)
小笠原定久
(千葉大学大学院講師・消化器内科学)

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GL肝癌診療ガイドライン 2021年版

ニュートピックス

・2021年10月,「肝癌診療ガイドライン」が4年ぶりに大改訂をされた(第5版).治療アルゴリズムの骨子については大幅に変更されていないが,推奨治療をエビデンスに基づき原則として2つまで表記されたわかりやすいものに改訂されている.

・進行肝細胞癌に対する薬物治療においては,次々と新規薬剤が保険承認され,現在6レジメンが実臨床で用いることができる.「肝癌診療ガイドライン」(第5版)では新たに「肝細胞癌薬物療法アルゴリズム」が作成された.

治療のポイント

・肝細胞癌は,腫瘍因子(肝内最大腫瘍径,腫瘍数,脈管浸潤,遠隔転移)と肝予備能を評価し,治療法を選択する.

・主な治療選択として外科的切除,経皮的焼灼術,経血管的治療,および薬物治療があり,同一症例における臨床経過において複数の専門医が治療に携わる場面がしばしばある.外科医,放射線科医,内科医が連携し,臨床経過のなかで治療介入が必要なたびに最適な治療選択を行う体制構築が肝要である.

◆病態と診断

A病態

・肝臓の悪性腫瘍は,肝臓から発生した原発性肝癌と他臓器から肝臓に転移をきたし腫瘍を形成した転移性肝癌に大別される.

・原発性肝癌は,肝細胞由来の肝細胞癌と肝臓内の胆管由来の肝内胆管癌に分類され,本邦では肝細胞癌が原発性肝癌の95%を占める.

・最新のがん統計では,本邦で1年間に診断される原発性肝癌は約38,000例であり徐々に減少傾向である.一方,年間死亡者数は25,000人であり,死亡者数では5番目に多い癌腫である.

・近年,肝細胞癌の背景肝疾患の要因がウイルス性から非ウイルス性へ急速に変わりつつある.HCVが薬物治療で排除することが可能となり,以前は大部分を占めていたC型慢性肝炎・肝硬変を背景とする肝細胞癌が減少傾向となっている.一方,生活習慣病人口の著増に伴い,非アルコール

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