今日の診療
治療指針

肝移植
liver transplantation
長谷川潔
(東京大学大学院教授・人工臓器・移植外科学)

頻度 (年間400件程度)

GL肝硬変診療ガイドライン2020改訂第3版

治療のポイント

・原疾患にかかわらずChild-Pugh C相当の肝硬変(もしくは非代償性肝硬変)を認める65歳以下(目安)の患者でほかに重大な疾患がない場合は肝移植のオプションを提示し,希望する場合は肝移植実施施設に紹介する.

・急性肝不全の患者の場合,脳症の有無にかかわらずすぐに血液浄化可能な施設に紹介する.

・肝機能面で局所治療が困難な肝癌症例でも,肝移植にて根治できる可能性がある.

A肝移植の適応

 進行性の肝疾患のため生命の危機の状態にあり,従来の治療方法では改善が期待されず,肝不全状態であれば肝移植の適応であり,適応疾患は多岐にわたる.

1)Status 1:急性肝不全昏睡型,遅発性肝不全,脳症をきたす代謝性疾患など,緊急に肝移植を施行しないと短期間に死亡が予測される(予測余命1か月以内)病態.

2)Status 2:HBV,HCV,自己免疫性,アルコール性,非アルコール性脂肪肝炎(NASH:nonalcoholic steato-hepatitis)などの肝細胞性非代償性肝硬変,または胆道閉鎖症,カロリ病,多発肝嚢胞(polycystic liver disease),門脈欠損症などの先天性肝・胆道疾患による非代償性肝硬変,あるいはBudd-Chiari症候群,原発性胆汁性胆管炎,原発性硬化性胆管炎,肝細胞癌(ミラノ基準もしくは5-5-500基準を満たす症例に限る),肝芽腫(肝外転移のない症例に限る),肝移植後グラフト機能不全,種々の先天性代謝疾患.

 基本的にはレシピエントが肝移植の適応条件を満たし,悪性腫瘍の併存,肝外の重篤な感染症の合併などの移植禁忌となる要素がないことが医学的な条件である.基準を満たさない肝細胞癌,転移性肝腫瘍,胆管癌などは適応とならない.

B肝移植術

 肝移植術には,脳死ドナーからの臓

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