今日の診療
治療指針

HBV,HCVキャリアの指導,管理および院内感染対策事業,再活性化の対策
management for hepatitis B virus(HBV),hepatitis C virus(HCV)and strategy for hospital infection and reactivation of HBV
須田剛生
(北海道大学大学院講師・消化器内科学)

AHBVキャリアの指導,管理

 HBVキャリア(HBV持続感染者)の病態は,宿主の免疫応答とウイルスの増殖の状態により「無症候性キャリア」「慢性肝炎(HBe抗原陰性・陽性)」「肝硬変」「非活動性キャリア」までさまざまな臨床病期をとる.

 本邦における,HBVキャリアの大半は母子感染であるが,近年になり成人期にゲノタイプA型のHBVによる急性肝炎から慢性化する症例が増加傾向である.

 成人期の感染は主に性交渉によるものであり,パートナーがB型肝炎ワクチン未接種であればワクチン接種を勧めるべきである(保険適用なし).日常生活においては,血液を介して感染するため,歯ブラシ,カミソリなどを共用しないことが重要となる.

 成人期の急性B型肝炎症例においては,HIVと重複感染していないかを必ずチェックするべきである.HIV抗体の測定は必ずしも文書同意は必要とならないが,必ず口頭同意を得たことをカルテに記載しておく必要がある.重複感染に気づかずB型肝炎に対し核酸アナログを投与した場合,HBVに対する核酸アナログは抗HIV活性を有するものがあり,単独での使用ではHIVが耐性化する原因となり,そのあとの抗HIV治療に難渋する原因となりうるためである.

BHBV感染防御

1.新生児に対するHBV感染予防対策

a.母子感染防止事業

 HBVを有する妊婦の出産に際し,HBVの母子感染を予防し,子どもがキャリア化(HBs抗原持続陽性者)することを予防するために行うものとなる.具体的には,HBVを有する妊婦が出産した場合,①出生直後(可能な限り12時間以内)に抗HBs人免疫グロブリンとともに,組換え沈降B型肝炎ワクチン0.25mL(健康保険適用あり)を皮下注する.さらに,同様の組換え沈降B型肝炎ワクチンを初回注射の1か月後,6か月後の合計3回接種を行う.生後9~12か月後にHBs抗原とHBs抗体を測定し評価する.

b.

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