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◆病態と診断
A病態
・血清Na濃度は血管内のNaと水の量によって規定される.血管内のNa量を決める調節系にレニン・アンジオテンシン系があるが,血管内のNa量にかかわらず水の量の調節によって血清Na濃度は決まる.
・最終的に血清Na濃度を決めるのはバソプレシンによる水の調節である.血漿浸透圧によりバソプレシンは調節され,ブドウ糖や尿毒素など,他の浸透圧物質が増加しない限り,血漿浸透圧と血清Na濃度はほぼ2:1の関係である.
・飲水をすると血漿浸透圧は下がり272mOsm/kgでバソプレシンはほぼ分泌されなくなる.このときの血清Na濃度は約135mEq/Lであり,血清Naの正常下限を決める.バソプレシンが分泌されなくなると尿量は増加し,血漿浸透圧および血清Na濃度は上昇する.血漿浸透圧が上昇するとバソプレシンの分泌は増加し,尿量は減少するが,血漿浸透圧と血清Naの正常上限を決めるのは血漿浸透圧290mOsm/kg付近の飲水行動である.これにより血清Na濃度は135~145mEq/Lに調節される.
B診断
・高Na血症と低Na血症は上記に異常をきたしたときに起きる.
・いずれも細胞外液量の評価は重要である.以下の手法で総合的に評価する.
・細胞外液量評価:体重の変化,浮腫の有無,口腔内乾燥の有無,毛細血管再充満時間の延長,胸部X線での心胸比の変化,下大静脈エコー,CTによる下大静脈および腎静脈の血管内充満度など.1つの項目だけで決定するのではなく,必ず複数の項目で評価し診断する.
◆治療方針
A高Na血症
上述の方法で細胞外液量の増減を評価し,Naのバランスで考える.高Na血症は低Na血症に比べ細胞外液量の減少がわかりづらいことがある.高Na血症は上述のように飲水や補液が十分に行われていれば起こりにくい.尿量を評価し飲水や補液が妥当か確認する必要がある.
1.細胞外液量減少+Na減少