今日の診療
治療指針

高Mg血症,低Mg血症
hypermagnesemia,hypomagnesemia
坂口悠介
(大阪大学大学院・腎疾患臓器連関制御学)

Ⅰ.高Mg血症

治療のポイント

・高Mg血症のほとんどがMg製剤内服に起因する医原性である.特に腎機能低下例では血清Mg濃度の定期的な測定が望ましい.

・便秘や腸閉塞の症例ではMg製剤が腸管内に停滞し,血液中に急速に拡散・吸収されることで致死的高Mg血症をきたすことがあるため注意する.

◆病態と診断

・血清Mg濃度の基準範囲は施設により異なるがおおむね1.8~2.4mg/dLである.基準範囲上限を上回れば高Mg血症と診断する.

血清Mg濃度5mg/dL以上に達すると高Mg血症による症状が出現する.

 5mg/dL~:悪心・嘔吐,倦怠感,深部腱反射低下,心電図変化(PR延長,QRS拡大,QT延長)

 10mg/dL~:深部腱反射消失,四肢麻痺,腸蠕動運動低下,血圧低下

 15mg/dL~:意識障害,呼吸筋麻痺,心停止

・高Mg血症のほとんどが医原性である.特に腎機能低下例へのMg製剤投与時には,定期的な血清Mg濃度の測定が重要である.

・便秘や腸閉塞のために大量のMg製剤が腸管内で停滞すると,Mgが血液中に急激に吸収され,腎機能低下がなくても致死的な高Mg血症を生じることがある.

◆治療方針

 意識障害,血圧低下,筋力低下,心電図変化などがあれば緊急性ありと判断し,すみやかに加療を開始する.

A緊急時

Px処方例 1)を実施しつつ,遅滞なく2)を開始する.

1)グルコン酸カルシウム(カルチコール)注 1回10mL 20分で静注保外

2)血液透析

B緊急性のない場合

 Mg製剤を中止し,必要に応じて下記を用いる.

Px処方例

 生理食塩液 2L/日 点滴静注

Ⅱ.低Mg血症

治療のポイント

・プロトンポンプ阻害薬の長期使用は,まれに重度の低Mg血症をきたす.

◆病態と診断

・血清Mg濃度が基準範囲下限である1.8mg/dLを下回れば低Mg血症と診断する.

・低Mg血症の原因は①摂取不足,②腸管吸収障害,③尿中排泄亢進に分類さ

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