今日の診療
治療指針

輸血療法
blood transfusion
米村雄士
(熊本県赤十字血液センター・所長)

ニュートピックス

・PBM(patient blood management)は,同種血輸血を可能な限り回避するためのプログラムである.患者自体が手術や抗癌剤治療を行う前に,貧血や血小板減少の鑑別診断を行い,前もって早めに薬剤(鉄剤,ビタミン剤,赤血球造血刺激因子,トロンボポエチン受容体作動薬)での治療を行い,輸血を回避する試みを行うことは,将来の輸血供給体制減少に対しても重要な方策である.

・「洗浄血小板の使用ガイド 第6版(2021年改訂)」が,公表され(日輸血細胞治療会誌 67:509-515,2021),その適応は,①血小板輸血による輸血副反応が2回以上観察された場合(アナフィラキシーショックなどの重篤な副反応の場合には1回でも観察された場合),②ABO異型HLA適合血小板を輸血する場合(抗体価が128倍以上の場合か患者が小児の場合),となっている.

治療のポイント

・まず末梢血球数検査値が患者の症状,身体所見,バイタルに合致したものか注意深く確認する.

・輸血開始は,日本輸血・細胞治療学会が作成した「科学的根拠に基づく血液製剤のガイドライン」に基づいて改訂された厚生労働省「血液製剤の使用指針」を参考に判断する.

・輸血により患者の症状,身体所見,バイタル,検査値が改善したか注意深く観察する.

・過剰な輸血は避け,適正な輸血を心がける.

・輸血による副反応などに注意する.

 輸血製剤の種類には赤血球製剤,血小板製剤,血漿製剤の3つがあり,病態により使う製剤の種類が違うので,使用製剤の観点から病態,診断,治療を考える.

A赤血球製剤

1.病態

 赤血球製剤輸血の目的は,血液疾患を含む内科疾患による貧血の場合は,組織や臓器へ十分な酸素を供給することが主である.また,出血など外科的な手術の場合は,循環血液量を維持することである.

2.診断

 初診時には,貧血の鑑別診断をすることが優先される.特に臨床

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