頻度 あまりみない〔1974年の厚生省特定疾患溶血性貧血調査研究班の全国調査によると,全溶血性貧血の推定有病率は人口100万人対12~44人であり,うち先天性溶血性貧血が34%であった.また,1998年の調査では,推計受療患者数は溶血性貧血全体で2,600人であり,うち先天性溶血性貧血が16.6%であった.先天性溶血性貧血における病型別頻度では,遺伝性球状赤血球症(HS)が最も高く,約70%を占めるとされている〕
◆病態と診断
A病態
・溶血性貧血とは,何らかの原因によって赤血球の寿命が短縮した状態の呼称であり,多くの疾患を包括する一種の症候群である.
・先天性溶血性貧血は病因から,赤血球膜異常症,ヘモグロビン(Hb)異常(異常Hb症,サラセミア症候群),赤血球酵素異常症の疾患群に分類される.
B診断
・まず溶血が存在するか否かの判断(溶血の確認)を行い,溶血が存在する場合には,その原因の検索(溶血性貧血の病型診断)を行う.
・溶血の存在を疑う主な検査所見として,Hb濃度低下,網赤血球増加,血清間接ビリルビン値上昇,血清AST値上昇,血清LD値上昇,血清ハプトグロビン値低下がある.また,主たる溶血の場が血管内である疾患では尿中Hbや尿中ヘモジデリンを認め,AST値やLD値の上昇が顕著となる.一方で主たる溶血の場が血管外(脾臓など)である疾患ではAST値やLD値と比較して間接ビリルビン値の上昇が顕著となり,脾腫を認めることもある.
1.赤血球膜異常症
・赤血球膜蛋白異常に起因する溶血性疾患群で,遺伝性球状赤血球症(HS:hereditary spherocytosis),遺伝性楕円赤血球症(HE:hereditary elliptocytosis),遺伝性有口赤血球症(HSt:hereditary stomatocytosis)があり,HStには遺伝性乾燥赤血球症(HX:hereditary