今日の診療
治療指針

代謝疾患 最近の動向
横手幸太郎
(千葉大学大学院教授・内分泌代謝・血液・老年内科学)

◆病態と診断

A家族性高コレステロール血症におけるアキレス腱厚の評価

 家族性高コレステロール血症の患者では,冠動脈疾患を早発するリスクが高いため,早期からの診断と治療が望まれる.その診断基準の1項目である腱黄色腫の客観的評価法として,アキレス腱厚の計測が一般的に行われる.これまでは,X線(軟線)撮影で,性別を問わず9mm以上を呈した場合に肥厚ありと判定したが,2022年に男性8mm以上,女性7.5mm以上へと変更された.また,X線撮影では皮膚とアキレス腱の境界線が不明瞭になりやすかったり,触診ではアキレス腱の横幅を評価するのに対してX線では前後方向の厚さを計測するなどの相違もあった.このため,汎用超音波装置を用いて7.5~24MHz程度のリニア型プローブによりアキレス腱厚を計測する手法も確立された.この超音波による計測では,前後径で男性6.0mm以上,女性5.5mm以上を肥厚と判断する.手技などの詳細については,「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」を参照されたい.なお,日常診療においては,X線または超音波いずれの計測法を用いても構わない.

◆治療

A動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022のポイント

 日本動脈硬化学会による「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」が5年ぶりに改訂された.その主なポイントは,①随時(非空腹時)のTGの基準値を設定したこと,②脂質管理目標値を設定するための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として,冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアが採用されたこと,③糖尿病がある場合のLDL-Cの管理目標値について,末梢動脈疾患,細小血管症(網膜症,腎症,神経障害)合併時,または喫煙ありの場合は100mg/dL未満とし,これらを伴わない場合は従前どおり120mg/dL未満としたこと,④2次予防の対象として冠動

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