今日の診療
治療指針

2型糖尿病
type 2 diabetes mellitus
小野 啓
(千葉大学大学院准教授・内分泌代謝・血液・老年内科学)

頻度 よくみる(人口の約8%にみられる)

GL糖尿病診療ガイドライン2019

ニュートピックス

・初めての経口GLP-1受容体作動薬である経口セマグルチド(リベルサス錠)が2021年2月に上市された.ペプチドホルモンの類似体を,胃酸を局所的に中和する薬剤を配合することで胃酸による分解を阻止し,有効な吸収をもたらす薬剤である.朝食前に少量の水で服用し,服用後30分間は飲食不可という限定的な服用方法ではあるものの,体重減少作用や予後改善効果の報告があり期待されている.

・メトホルミンの類似薬であるが,インスリン抵抗性の改善のみならずインスリン分泌促進作用を併せもつイメグリミンが2021年9月に上市された.新たな作用機序の経口血糖降下薬であり注目されている.

・持続的皮下ブドウ糖濃度測定器であるリブレセンサーからのデータ読み取りが,スマートフォンのアプリにより可能となり,さらにインターネット上のサーバーを介して医療者とデータを共有できるようになった.感染症流行下での遠隔診療に有用なツールとなる可能性をもつ.

治療のポイント

・2型糖尿病の発症早期は自覚症状に乏しいことが多く,検査値の異常しか認めないが,合併症の自覚症状が出現した時点ではすでに治療効果が乏しい場合が多いのが特徴である.そのため,検査値を指標にして治療方針を立てる必要がある.

・生活習慣の是正が治療のなかで重要な位置を占める.さらに,長期にわたり治療や経過観察を継続する必要があることが多いため,自覚症状のない患者に対し,疾患の特徴や治療の必要性をよく説明し,十分に納得したうえで治療を開始することが重要である.この説明が不足していると,自覚症状がないにもかかわらず定期的に通院する動機付けが不十分となり,通院の自己中断の危険性が高まる.

◆病態と診断

A病態

・インスリンは血糖を低下させるホルモンである.2型糖尿病は,生活習慣や体質と加齢によ

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