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GL糖尿病診療ガイドライン2019
治療のポイント
・妊娠前から分娩まで厳格な血糖コントロールを行う.
・薬物療法は,インスリンを使用する.
・妊娠糖尿病は,分娩後も継続的に耐糖能の評価が必要である.
◆病態と診断
A病態
・胎盤でインスリン拮抗ホルモンやアディポサイトカインが産生され,インスリン抵抗性が増大し,高血糖が顕在化する.
・一般的に妊娠中期(22~24週)からインスリン抵抗性が増大する.
・母体の高血糖は胎盤を通過するが,母体のインスリンは通過しない.母体の高血糖は,胎児のインスリン分泌を促進し,高インスリン血症を生じさせる.その結果,先天奇形や巨大児,将来の肥満や耐糖能障害などを引き起こす.
B診断
・妊娠中の糖代謝異常は3つに分類され,診断基準がある.
1.糖尿病合併妊娠
①妊娠前にすでに診断されている糖尿病,②確実な糖尿病網膜症があるもの
2.妊娠中の明らかな糖尿病
以下のいずれかを満たした場合:①空腹時血糖値126mg/dL以上,②HbA1c6.5%以上.随時血糖値200mg/dL以上あるいは75g経口ブドウ糖負荷試験で2時間値200mg/dL以上の場合は,妊娠中の明らかな糖尿病の存在を念頭におき,①または②の基準を満たすかどうか確認する.分娩後に再評価が必要である.
3.妊娠糖尿病
75g経口ブドウ糖負荷試験で次の1点以上を満たした場合:①空腹時血糖値92mg/dL以上,②1時間値180mg/dL以上,③2時間値153mg/dL以上.
◆治療方針
A妊娠時期ごとの治療方針
1.妊娠前
妊娠初期の高血糖は,児の催奇形性因子となる.妊娠許容条件は,HbA1c6.5%未満,正常または単純網膜症,腎症1期または2期である.また,ACE阻害薬,ARB,スタチン系薬剤,フィブラート系薬剤など妊婦に禁忌となっている薬剤は妊娠前に中止する.DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬などの薬剤は,