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治療指針

糖尿病性ケトアシドーシス
diabetic ketoacidosis(DKA)
中神朋子
(東京女子医科大学教授・糖尿病・代謝内科学)

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GL糖尿病診療ガイドライン2019

GL糖尿病治療ガイド2022-2023

ニュートピックス

・SGLT2阻害薬による正常血糖ケトアシドーシスが報告されるようになった.同薬の投与により尿糖排泄増加から血糖および血中インスリンが低下し,グルカゴン/インスリン比が上昇する.その結果,肝の糖産生が増加し,脂肪組織の脂肪分解が亢進し,産生された遊離脂肪酸が肝でケトン体に変わる.

治療のポイント

・糖尿病患者の意識障害には,DKAのほか,高浸透圧高血糖状態(HHS)や乳酸アシドーシスなども知られ,適切な鑑別診断が求められる.DKAは1型糖尿病患者に多い.

・感染が疑われる場合は炎症反応を調べ,血液培養や胸部X線検査などを行う必要がある.

・DKAの治療を成功させるには患者の頻繁なモニタリング,血液量減少症と高血糖症の是正,電解質の損失の交換,および原因の注意深い調査が重要である.

◆病態と診断

A病態

・アシドーシスと脱水がDKAの本態であり,重症では昏睡となる.

・悪心,嘔吐,びまん性腹痛が頻繁に生じる.速く深い呼吸(クスマウル呼吸)や,呼気中のアセトン臭を呈することがある.

・感染症やインスリン注射中断,暴飲暴食,妊娠,SGLT2阻害薬投与などが誘因となる.

B診断

・重要な検査項目として血糖値,血液ガス分析,血中・尿中ケトン体を測定する.また,意識障害の原因が低血糖でないことを確認する.

高血糖(>250mg/dL)アシドーシス(動脈血pH<7.30)血中総ケトン体(3mmol/L以上)の場合,DKAを認める.

◆治療方針

 脱水に対する輸液と,高血糖・アシドーシス補正のためのインスリン投与を原則とする.併存した感染症に対しては,早期の診断と適切な抗菌薬投与を行うことで,患者の予後の改善につながる.

A脱水に対する十分な輸液

Px処方例

 生理食塩液 500mL/時 点滴静注

 最初数時間は水分欠

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