今日の診療
治療指針

低血糖症
hypoglycemia
藤田義人
(京都大学講師・糖尿病・内分泌・栄養内科)

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治療のポイント

・低血糖症状が存在し,かつそのときの血糖値が70mg/dL未満の場合を低血糖症と診断する.

・低血糖をきたした場合には,すみやかにブドウ糖を投与し血糖値を回復させる.

・経口摂取が不可能な場合は,医療機関においてブドウ糖を静脈投与する.

◆病態と診断

A病態

・低血糖症は糖尿病患者に対し,インスリンやSU薬など薬物治療中に高頻度にみられる緊急対応が必要な病態である.特にSU薬による低血糖は遷延しやすく注意が必要である.

・その他の成因としてインスリノーマ,反応性低血糖,インスリン自己抗体の存在,間脳・下垂体機能不全,糖尿病治療薬以外の薬剤などが挙げられ,低血糖の緊急対応後に鑑別が必要となる場合がある.

・一般的には血糖値が70mg/dLを下回ってくると交感神経刺激症状として発汗,不安,動悸,頻脈,手指振戦,顔面蒼白などの症状が出現する.

・血糖値が50mg/dL程度まで低下すると中枢神経症状として頭痛,目のかすみ,空腹感,眠気が出現し,50mg/dL以下ではさらに意識レベルの低下,異常行動,けいれんなどが出現し昏睡に至り,治療が遅れると死に至る場合がある.

B診断

・上記に挙げた低血糖症状が存在し,かつ血糖値が70mg/dL未満の場合,低血糖と診断する.

◆治療方針

 経口摂取が可能な場合には,ブドウ糖(10g)またはブドウ糖を含む飲料水(150~200mL)を摂取させる.その他の糖質を用いる場合は効果発現が遅延する.

 低血糖が改善するまで15分ごとに摂取を繰り返し,また回復後には再度の低血糖(遷延性低血糖)の予防策として早めに炭水化物を含む食品を摂取させる.

 経口摂取が不可能な場合には,ブドウ糖や砂糖を口唇と歯肉の間に塗り付け,グルカゴン(注射薬もしくは点鼻薬)があれば使用し,直ちに医療機関に連絡をとる.

 医療機関に搬送後,50%グルコース注射液20mLを静脈内投与す

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