今日の診療
治療指針

脂質異常症―高LDL-C血症
dyslipidemia―high serum LDL-cholesterol
竹本 稔
(国際医療福祉大学主任教授・糖尿病・代謝・内分泌内科学)

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GL動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版

ニュートピックス

・わが国における脂質異常症管理の指針である「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版」が発表された.

治療のポイント

・食事療法,運動療法,禁煙など生活習慣を改善し,適正な体重やウエスト周囲長を達成し維持する.生活習慣の改善によっても血清脂質値の改善がみられない場合,薬物療法を行う.

・FHを見落とさないよう留意する.

・甲状腺機能低下症などの続発性脂質異常症を鑑別し,続発性の場合は原疾患の治療を優先する.

・冠動脈疾患や脳血管疾患の発症リスクを勘案し,個々のLDL-C管理目標値を設定し治療する.

・高LDL-C治療の第1選択薬はHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)であり,1次予防,2次予防ともにエビデンスが豊富である.

・スタチン単剤でLDL-C値が管理目標値に達しない場合,エゼチミブの併用や症例によってはPCSK9阻害薬の併用を考慮する.

・脂質管理の最終目的は動脈硬化性疾患の発症・進展予防であり,脂質値のみならず血圧,血糖値,体重,禁煙など包括的リスク管理が重要である.

◆病態と診断

A病態

・血清脂質のコレステロールは肝臓の合成量とリポ蛋白の取り込み量,腸管での摂取量および吸収量と直接の排泄量,胆汁酸の排泄量により調整され,LDL-C調節の約7割を肝臓が担っている.

・食事性コレステロールや飽和脂肪酸の摂取によって血清TC値が上昇することが示されている.

・LDL-C値の上昇に伴い,冠動脈疾患の相対リスクが上昇する.

・糖尿病やメタボリック症候群で観察される,超低比重リポ蛋白(VLDL:very low density lipoprotein),カイロミクロン,レムナントなどの中性脂肪に富んだリポ蛋白の増加やLDLの小型化(sdLDL),酸化といった脂質の質の変化も動脈硬化を促進させる.

・家族性高コレステロー

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