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GL甲状腺疾患診断ガイドライン2021(2022年6月2日改定)
GL粘液水腫性昏睡の診断基準(3次案)(2010)
ニュートピックス
・甲状腺ホルモン薬はほかの製剤(経口GLP-1など)との併用に注意が必要.
治療のポイント
・甲状腺ホルモン薬は少量から漸増する.
・副腎皮質機能低下症の合併例では,必ず副腎皮質ホルモンの補充を先に開始する.
・粘液水腫性昏睡を疑った場合,ICU管理により直ちに治療を開始する.
◆病態と診断
A病態
・甲状腺機能低下症は,甲状腺ホルモンの合成や分泌障害,作用機構の障害により身体に必要な甲状腺ホルモンの作用が低下した病態である.
・多くが甲状腺を原因とする原発性甲状腺機能低下症であり,特に慢性甲状腺炎(橋本病)が多い.亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎の回復期にも甲状腺機能低下症が発症することがあり,さらに近年チロシンキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬による甲状腺機能障害が増えている.また,まれではあるが下垂体や視床下部の障害による中枢性甲状腺機能低下症があり,間脳下垂体部の腫瘍や照射,免疫チェックポイント阻害薬などによる下垂体炎が原因となる.
・重度の甲状腺機能低下症に,何らかの誘因で意識障害,低体温,呼吸不全,循環不全などを起こした病態を粘液水腫性昏睡とよぶ.致命率の高い緊急を要する疾患である.
B診断
・診断は,血中FT4 とTSHの測定で行う.FT4 が低値でTSHが高値であれば原発性が最も疑われ,FT4 が基準値内でTSHのみが高値のときは潜在性甲状腺機能低下症とよばれる.FT4 が低値でTSHが正常あるいは低値であれば,中枢性甲状腺機能低下症もしくは低T3 症候群(nonthyroidal illness)(重症例)が疑われる.間脳下垂体部の占拠性病変によるものの多くは,血清TSH値は基準値内である.
・臨床症状は,特異的なものは少なく,倦怠