頻度 割合みる
◆病態と診断
A病態
・中枢神経系疾患,肺疾患,炎症,異所性バソプレシン産生腫瘍,薬剤などにより血漿浸透圧と血清Na濃度が低値にもかかわらず,バソプレシンが過剰に分泌される病態である.
・血清Na濃度は一般に125mEq/L程度までは無症状であることが多いが,125mEq/L未満では全身倦怠感,食欲不振などが出てくる.110~120mEq/Lでは傾眠傾向や食欲の低下,105~110mEq/Lで嘔気,嘔吐,昏睡,105mEq/L未満ではけいれんや昏睡で生命の危険にさらされることがある.飲水過多や漫然の補液によりみられることも少なくない.浮腫はみられない.
・副腎不全や低張性脱水症などからくる低Na血症との鑑別を要する.
B診断
1.症状
・低浸透圧血症を伴う低Na血症.
・尿浸透圧が100mOsm/kg・H2Oを超える.
・尿中Na濃度(随時尿)が20mEq/Lを超える.
・浮腫がない.脱水所見がない.
・副腎不全が否定できる.
・厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「間脳下垂体機能障害に関する調査研究」班編「バソプレシン分泌過剰症(SIADH)の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)」も参照されたい.
2.診断のポイント
・飲水量や補液量が多くないか確認する.原因疾患の検索と下垂体-副腎疾患を鑑別する.また,投与薬剤を確認する.
・高齢者では脱水でも尿中Na>20mEq/Lのことがあり,鑑別に注意を要する.
◆治療方針
治療は上記「バソプレシン分泌過剰症(SIADH)の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)」に従い行う.
A血清Na濃度の補正
SIADHの原因疾患を検索し,治療を行う.炎症や薬剤などすぐに介入が可能なものは行う.水分制限が可能な症例は体重1kgあたり15~20mLを指標に行う.水分制限の困難な症例には食塩を経口的に投与する場合もある.血清Na濃度の低下が高度の場合に