今日の診療
治療指針

インスリノーマ,膵消化管ホルモン産生腫瘍
insulinoma and hormone-producing gastroenteropancreatic neuroendocrine tumors
工藤 篤
(東京医科歯科大学病院教授・肝胆膵外科)

頻度 あまりみない

GL膵・消化管神経内分泌腫瘍(NEN)診療ガイドライン2019年(第2版)

ニュートピックス

・2021年6月から神経内分泌腫瘍に対してペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)が保険適用になった.機能性腫瘍のホルモン症状を軽減するという報告もある.

治療のポイント

・外科手術が第1選択であり,ホルモン症状は切除の絶対的適応である.

・ホルモン産生腫瘍の局在は,動脈の選択的血管造影で把握する.

・切除不能,あるいはホルモン産生をする腫瘍の局在を同定できない場合は薬物療法による対症療法を行う.

◆病態と診断

A病態

・機能性腫瘍はホルモン症状をきたすとともに悪性腫瘍として予後を決定する.

・インスリノーマは,低血糖,自律神経症状,中枢神経症状,多彩な精神症状,慢性的な体重増加をきたす.

・ガストリノーマは,消化性潰瘍,穿孔,逆流性食道炎,腹痛,出血,下痢をきたす.

・グルカゴノーマは,耐糖能異常,体重減少,低アミノ酸血症などを起こす.

・VIP産生腫瘍は,1日20~50回に及ぶ水様性下痢から,低K血症,代謝性アシドーシス(WDHA症候群)を起こす.

・カルチノイド症候群は紅潮,下痢などをきたし,造影検査,麻酔,手術,ストレスなどからクライシスとなり,気管支れん縮,著明な血圧低下,心停止をきたすことがある.

B診断

・インスリノーマ:Whippleの3徴(①空腹時の低血糖発作,②症状発現時の血糖55mg/dL未満,③ブドウ糖投与で症状改善)を確認し,インスリン,Cペプチドを測定,72時間絶食試験,混合食試験などを行う.

・ガストリノーマ:制酸薬や萎縮性胃炎によらない高ガストリン血症,胃十二指腸の隆起性病変,繰り返す消化性潰瘍などから診断する.

・消化管神経内分泌腫瘍(NEN)では尿中5-HIAA(24時間蓄尿)を測定する.

・20歳未満のインスリノーマ,十二指腸原発や副甲状腺機能亢進症のないガストリ

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