頻度 よくみる
治療のポイント
・乳輪下膿瘍は慢性化する場合も多い.
・非典型例,陥没乳頭合併例には炎症性乳癌や浸潤癌の否定が必要となる.
Ⅰ.急性乳腺炎
◆病態と診断
・うっ滞性と化膿性に大別される.
A病態
1.うっ滞性乳腺炎
・20~30歳代の初産後授乳期に好発する.
・原因として,乳汁産生部位である小葉,乳汁を乳頭まで運搬する乳管の一部で乳汁のうっ滞が生じることで,乳房の発赤,腫脹,熱感,疼痛,腫瘤などが生ずる.
2.化膿性乳腺炎
・うっ滞性乳腺炎に引き続いて生じることが多い.
・うっ滞した乳汁に乳頭などからの細菌感染が生じ,より強い乳房の発赤,腫脹,熱感,疼痛とともに,腫瘤の膿瘍化,腋窩リンパ節腫脹,全身発熱などが生ずる.
B診断
・うっ滞性,化膿性乳腺炎では超音波,CT,MRI検査で乳管の拡張,嚢胞状腫瘤が描出される.嚢胞状部分の穿刺吸引細胞診(FNA:fine needle aspiration)では,うっ滞性乳腺炎では乳汁様液体,化膿性乳腺炎では膿状の液体が採取される.
・検体の細菌培養で原因菌の検索,細胞診検査で嚢胞状腫瘤の病理診断を施行する.
◆治療方針
Aうっ滞性乳腺炎
うっ滞した乳汁排泄のための乳房マッサージや腫脹,発赤,疼痛軽減のための乳房冷却,鎮痛解熱薬投与などが行われる.
B化膿性乳腺炎
上記治療に加えて,抗菌薬の投与を考慮する.起炎菌はブドウ球菌,レンサ球菌などがほとんどであるためセフェム系抗菌薬が第1選択となる.感染状況が悪化した場合は外科的処置として膿瘍部の切開排膿,ドレナージ術が施行される.
Px処方例 下記を併用する.
Ⅱ.乳輪下膿瘍
◆病態と診断
A病態
・非授乳期の20~50歳代の女性に好発し,乳輪直下,乳輪周囲に有痛性腫