今日の診療
治療指針

線維腺腫
fibroadenoma
石川 孝
(東京医科大学主任教授・乳腺科学分野)

頻度 よくみる

治療のポイント

・若年女性に多い良性腫瘍で,触診と超音波検査で診断は容易であり,急速な増大傾向がなければ経過観察でよい.

・確定診断のためには針生検が必要であり,治療は摘出のみである.

◆病態と診断

A病態

・乳腺に発生する良性腫瘍のなかで最も頻度が高く,20~30歳代の若年者に多くみられる.

・境界が明瞭で比較的硬いため腫瘤を自覚して来院することが多い.

・通常は2~3cm程度で増殖は止まり,長い経過のなかでは自然退縮する場合もあるが,思春期に生じる若年性線維腺腫はまれに10cm以上に増大することもある.

・病理学的には間質成分と上皮成分の混合腫瘍であり,上皮成分の組織形態から4型(管内型,管周囲型,類臓器型,乳腺症型)に分類される.管内型は病理学的にもう1つの混合腫瘍である葉状腫瘍との鑑別が問題になることがある.

B診断

・若年者が多いのでマンモグラフィよりも超音波検査が有用なことが多い.

・超音波所見は境界が明瞭平滑で縦横比が低い腫瘤である.また陳旧性の腫瘤では粗大な石灰化を腫瘤内に認めることがあり,その場合はマンモグラフィではポップコーンのような特徴的な粗大石灰化所見を示す.

◆治療方針

 急速増大の経過がなく3cm程度以下で理学所見および画像所見が典型的であれば,触診および超音波検査による経過観察でよい.これらの所見が典型的ではない場合は,限局性腫瘤を形成する粘液癌などの乳癌との鑑別診断,また急速に増大する場合には前述の葉状腫瘍との鑑別診断が必要になるので,針生検による病理組織検査を行うべきである.しかし針生検では葉状腫瘍との鑑別がつかないために摘出生検が必要になることもある.

 治療としては手術による摘出のみである.摘出は巨大な腫瘤でない限り,局所麻酔で行うが,被膜に覆われているため周囲の組織を損傷せずに腫瘤のみを摘出することができる.可能であれば皮膚切開を乳輪周囲や乳房外側

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