今日の診療
治療指針

薬物アレルギー
drug allergy
中込一之
(埼玉医科大学准教授・呼吸器内科学)

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治療のポイント

・アナフィラキシー例,呼吸器症状出現例では,アドレナリン筋肉注射を行う.

・薬物アレルギーが診断された場合は,原則,回避指導を行う.アナフィラキシー例では,アドレナリン自己注射システムの導入が必要である.

・代替薬は,一般に種類が異なる系統から選ぶ.

・代替薬がない場合は薬剤の脱感作を検討する.

◆病態と診断

A病態

・薬物アレルギーは,薬物またはその代謝産物を抗原として,それに対応する抗体あるいは感作リンパ球との間で発現した免疫反応であり,Ⅰ型(即時型),Ⅱ型(細胞傷害型),Ⅲ型(免疫複合体型),Ⅳ型(遅延型)に分けられる.Ⅰ型アレルギーはIgE依存性即時型反応であり,代表はペニシリンアレルギーである.また,薬物が直接細胞に作用し,ヒスタミンなどを放出することによってアレルギー様症状を誘導する機序も知られ,代表は造影剤アレルギーである.

・薬物アレルギーのなかで,最も危険な反応は,アナフィラキシーである.アナフィラキシーとは,医薬品などに対する急性の過敏反応により,多くの場合は30分以内で,じん麻疹などの皮膚症状や,腹痛や嘔吐などの消化器症状,息苦しさなどの呼吸器症状,血圧低下などの循環器症状,などの全身症状を示すことと定義される.

・薬疹はⅣ型アレルギーによって生じることが多く,薬剤の使用開始から感作されるまで4~5日以上の日数を要する.重症薬疹として,スティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN:toxic epidermal necrolysis)が挙げられる.表皮剥離の範囲が全身の10%以下の場合にSJS,それ以上の場合にTENと診断される.このほかの重症薬疹として薬剤性過敏症症候群(DIHS:drug-induced hypersensitivity syndrome)が挙げられる.DIHSは,発症までに長期間を要するだけでなく

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