今日の診療
治療指針

職業性アレルギー
occupational allergy
久田剛志
(群馬大学大学院教授・保健学研究科)

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治療のポイント

・原因となる物質を同定して職場環境から除去する必要があるが,実際には困難なことが多い.

Ⅰ.職業性喘息

◆病態と診断

A病態

・特定の労働環境で特定の職業性物質に曝露されることにより発症する喘息である.

・免疫アレルギー機序が関与する「感作物質誘発職業性喘息」と,職場で刺激性の物質を一度に多量に吸入したために発症する「刺激物質誘発職業性喘息」がある.

・高分子量抗原(主に動物・植物由来)と低分子量抗原(化学物質・金属など)の原因に分けられる.

・高分子量物質では,完全な抗原として作用し,抗原特異的IgEの産生を誘導する.

・低分子化学物質などが抗原として働く場合,ハプテンとしてヒトの蛋白質と結合することにより抗原性をもつ.

・低分子量物質の感作においては,IgEの病態への関与は明らかでない.

B診断

・就業日に症状が強く,週末や休暇中に症状が軽快するのが特徴である.

・感作物質誘発職業性喘息を疑う場合,ピークフロー値の連続測定がしばしば有効である.

・職業性感作物質による皮膚テスト,血清特異的IgE測定,抗原吸入誘発試験は原因物質を同定するためには有用である.

◆治療方針

 原因物質への曝露を回避することが基本である.そのうえで吸入ステロイドや気管支拡張薬などの「喘息予防・管理ガイドライン2021」に沿った標準的薬物療法を行う(,「気管支喘息」の項参照).また,職場の配置転換などを考慮する場合がある.

 抗原特異的免疫療法は高分子量抗原が原因の場合は有効であると予想されるが,市販されている治療用アレルゲンは限定されている.

Ⅱ.職業性アレルギー性鼻炎

◆病態と診断

A病態

・職場環境に存在する物質が原因であり,間欠的あるいは持続的に起こるくしゃみ鼻水鼻閉を特徴とする.

B診断

・問診,免疫学的検査および鼻粘膜誘発試験を組み合わせて診断する.

・皮膚テストや血液検査などで抗原特異的IgE

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