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GL脳卒中治療ガイドライン2021
ニュートピックス
・上下肢痙縮に対しては,A型BTX(インコボツリヌストキシンA)を1回の施注において,最大で上肢に400単位,下肢に400単位,合計800単位投与することが可能となった(2021年6月以降).
治療のポイント
・症状出現(発症)から数か月間~数年間などと長期間が経過していても,BTX療法の効果は期待できることが多い.
・上下肢痙縮の場合,投与対象筋の筋力が保たれていることを確認してからBTXを投与する(脱力が生じないようにする).
・上下肢痙縮の場合,重度の麻痺であっても「痙縮の改善による介護負担の軽減(例えば,洗体や更衣の介護を容易にする)」を目的にBTX投与を行うことがある.
ABTX療法の概要
ボツリヌス毒素(BTX)は,A型からG型まで7つの型に分類されるが,そのうちで治療薬として臨床応用されているのはA型とB型である.A型毒素もB型毒素も軽鎖と重鎖との二本鎖から構成されるが,A型毒素の軽鎖はSNAP25を,B型毒素の軽鎖はVAMP2を切断することで,神経筋接合部におけるアセチルコリンの放出を阻害する.その結果,神経筋伝達が阻害され筋弛緩作用が発揮される.
本邦では,A型毒素としてオナボツリヌストキシンA(ボトックス)とインコボツリヌストキシンA(ゼオマイン)が,B型毒素としてリマボツリヌストキシンB(ナーブロック)が使用可能である(2022年8月現在).オナボツリヌストキシンAとインコボツリヌストキシンA,それぞれ1単位の薬効は,ほぼ同等である.
BTX療法は,筋緊張亢進や異常筋収縮を根本的に治療するものではないため,8~12週間以上の間隔で定期的に投与を繰り返す.BTXは低濃度のほうが浸潤範囲が広くなるので,体積の大きい筋に投与する際にはより薄く溶解する.
BBTX療法の適応
本邦では,上肢痙縮,下肢痙縮,片側