GL慢性疼痛診療ガイドライン(2021)
GL神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第2版追補版(2019)
ニュートピックス
・国際疼痛学会で3か月以上持続する痛みと定義された慢性疼痛は,国際疾病分類(ICD-11)の第21章に初めて分類コード(MG30)が与えられた.2022年1月から運用が始まり,慢性疼痛の診断・治療の新たな時代が幕開けした.
治療のポイント
・痛みの機序には,「侵害受容性」,「神経障害性」,痛みの成立にかかわる機構と過程の障害である「痛覚変調性(nociplastic pain)」がある.慢性疼痛はこれらの機序に心理社会的要因の修飾で生じ,これらの機序に対応した治療が必要である.
・神経障害性の診断は,疼痛部位の感覚障害の存在が必須である.
・生物心理社会的要因の情報収集が必要である.
◆病態と診断
A病態
・慢性疼痛は末梢性感作,中枢性感作,下行性疼痛抑制系活動低下が絡みあい,心理社会的要因の修飾により生じた痛みが持続する病態である.
B診断
・3か月以上持続する痛み.
◆治療方針
A基本対応
1.患者への慢性疼痛の情報提供
痛みの病気としてICD-11分類に記載されていることを紹介.
2.運動習慣取入れの勧め(ストレッチ,ウォーキング)
侵害受容器閾値低下と下行性疼痛抑制系活動低下に対する改善効果.
3.心理社会的要因の情報収集と評価
生育歴,職歴の聴取を通じ,家族,同僚,友人との関係性を把握.
B目標設定
医師と患者間で治療目標設定を共有し,痛みでできなくなったことの1つずつの取り戻しをはかる.
C薬物療法
侵害受容性,神経障害性,痛覚変調性に対応した薬物選択を行う.薬物効果は日常生活改善および痛み改善を指標とし,改善後は減量,中止を目指す.
1.侵害受容性
Px処方例 1)を最初に使い,無効時は中止して2)に切り替え,無効時は2)も中止する.1)単独で改善が不十分な場合は2)を併用す