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治療指針

虚血性脳血管障害の外科的治療(血管内治療を含む)
surgical and endovascular treatment for ischemic cerebrovascular diseases
高橋 淳
(近畿大学主任教授・脳神経外科)

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GL脳卒中治療ガイドライン2021

Ⅰ.心原性脳塞栓症に対する急性期機械的血栓回収療法

治療のポイント

・主に心房細動による心内血栓が脳主幹動脈を急性閉塞し,脳梗塞を生じる.従来のアルテプラーゼ静注による再開通率は低い.

・血管内治療の有用性が確立され,国内で年間約16,000件が実施される(2020年).

◆病態と診断

A病態

心房細動により左房内血流がうっ滞し血栓が形成される.左心系から内頸動脈,椎骨動脈に血栓が迷入して脳主幹動脈を閉塞し,突然の神経症状(片麻痺,失語症,共同偏視など),意識障害を生じる.

B診断

CT/MRIで脳梗塞と閉塞脳血管を診断する.

心電図で心房細動があれば本症の可能性が高い.ただし発作性心房細動が洞調律に戻る可能性も念頭におく.

◆治療方針

 アルテプラーゼ投与基準を満たせばこれを開始し,主幹動脈閉塞の場合は並行して機械的血栓回収療法に進む.再開通までの時間が予後に直結するため,アルテプラーゼの効果確認を待たない.局所麻酔下で大腿動脈を穿刺し,血栓回収デバイス(ステントリトリーバーまたは血栓吸引カテーテル)を頭蓋内動脈に導入して血栓を回収する.おおむね発症6時間以内がよい適応であるが,救済可能領域を評価したうえでこれを超えた治療も行われる.

Ⅱ.頸部頸動脈狭窄症に対する外科治療

治療のポイント

・頸部頸動脈分岐部は動脈硬化の頻発部位であり,壁内粥腫破裂による遠位塞栓症が主病態である.

・塞栓予防のために,抗血小板療法に加えて,外科治療・血管内治療が行われる.

◆病態と診断

A病態

・動脈壁内膜内の粥腫(プラーク)形成により,内膜が肥厚し内腔が狭小化する.粥腫破裂により粥腫成分や血栓が遊離し,脳動脈閉塞,脳梗塞に至る.

B診断

・頸部血管MRA,頸部エコー,CT血管造影で狭窄度を評価する.

MRI black-blood法で粥腫の性状を評価する.大きな粥腫内出血を伴

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