治療のポイント
・脳卒中の合併症は,感染症,消化管出血,けいれん,頭痛,各種の血栓塞栓症など多岐にわたり頻度も高い.
・脳卒中後の誤嚥性肺炎は脳卒中発症後1週間以内に高頻度に発症し,感染症の管理は死亡率を含めた機能予後に影響する.
・入院時から合併症のリスクを評価し,早期から嚥下評価,理学療法などを行うことは合併症を減じる.
・感染症予防を目的とした一律の抗菌薬投与は勧められないが,ひとたび誤嚥性肺炎が発症した場合には適切な抗菌薬治療が必要である.
◆病態と診断
A病態
・脳卒中後の誤嚥性肺炎は嚥下障害が原因であるため,早期から嚥下機能を評価し経口摂取について適切な時期と食形態を検討すべきである.
・脳卒中後には球麻痺や偽性(仮性)球麻痺のために嚥下障害が生じやすくなる.球麻痺はワレンベルグ症候群など延髄病変により生じ,偽性球麻痺は延髄より上位の両側錐体路病変により生じる.
・再発および難治化しやすく,医療・介護関連肺炎へ進展しやすい.
B診断
・嚥下障害の評価,胸部理学所見,胸部画像検査,血液検査での炎症反応などから診断される.
・発熱,咳嗽,喀痰が肺炎の典型的な徴候であるが,高齢者では典型的な徴候を欠くこともある.誤嚥性肺炎は右側肺に生じやすく,坐位で誤嚥した場合は肺下葉に,臥位で誤嚥した場合は中葉背側区域に肺炎が生じやすい.
・市中肺炎よりも発症や進行は緩徐なことが多い.
◆治療方針
A嚥下障害に対する治療
1.嚥下の評価,摂食嚥下リハビリテーション,口腔ケアなど
脳卒中発症後早期の嚥下評価は肺炎のリスクを低下させる.水飲みテストや反復唾液嚥下テストなどで評価を行う.口腔ケアや嚥下リハビリテーションも誤嚥性肺炎の予防に有効である.
2.栄養管理
嚥下機能を評価したうえで,食事を開始する時期と食形態を検討する.とろみをつけると誤嚥を減らせる.
経管栄養を実施することは誤嚥性肺炎のリスクになる.一方で経管
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