今日の診療
治療指針

脳腫瘍
brain tumor
上羽哲也
(高知大学教授・脳神経外科学)

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治療のポイント

・ほかの腫瘍と異なる脳腫瘍の特殊性は,頭蓋骨に囲まれていることである.したがって,頭蓋内圧亢進症状を常に念頭におかなければならない.

・古くから頭痛・嘔吐・うっ血乳頭が3徴候といわれているが,今も大切な徴候である.したがって,頭痛の原因が器質的疾患でないかどうか検討することは大切である.うっ血乳頭があればなおさらであり,早急に精査治療が必要となる.

・頭蓋内圧をコントロールするために,脳腫瘍に対して外科的摘出,放射線治療,化学療法が行われる.組み合わせは腫瘍の種類により効果が異なり,さまざまな組み合わせで治療が行われる.

・その他の症状として,麻痺や高次脳機能障害,認知機能障害が出現することも多い.症状から認知症を疑ったとしても安易に診断をせずに,必ず器質的疾患を除外することが大切である.

・脳腫瘍の種類には,大きく分けて原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍の2種類がある.転移性脳腫瘍のほうが当然,原発性脳腫瘍よりも多い.

◆病態と診断

A転移性脳腫瘍

・全身にできた癌が頭蓋内に転移したものである.

・原発巣としては,肺癌,乳癌,直腸癌,腎癌,胃癌などが多い.

・脳内転移をした腫瘍の増殖は速く,周囲に浮腫を伴い頭蓋内圧亢進症状や局所の神経症状を呈する.

・乳癌は硬膜に転移することもあり,髄膜腫との鑑別を要する.

・転移性脳腫瘍は,高齢化と癌治療の成績向上により増加傾向にある.

B原発性脳腫瘍

1.神経膠腫

・原発性脳腫瘍のなかで髄膜腫とならんで頻度が高い.

・悪性度が高く,脳内を浸潤する能力が高く全摘出は困難である.

・昨今は遺伝子情報をもとに分類がなされるようになり,かつてはグレード2と診断されていたものが,IDH遺伝子が野生型であると膠芽腫と診断されるようになった.IDHとはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(isocitrate dehydrogenase)のことでありTCA回路に関与す

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