今日の診療
治療指針

頭部外傷後遺症
posttraumatic sequelae in head injury
戸村 哲
(防衛医科大学校准教授・防衛医学研究センター脳神経外科)

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GL頭部外傷治療・管理のガイドライン 第4版(2019)

治療のポイント

・頭部打撲の既往だけで明らかな症状のない患者にやみくもに頭部CTを施行することは,放射線被曝の影響の観点から避けるべきである.

・脳振盪症状からの回復には7~10日を要し,若年者ではより長期間必要な傾向がある.

・特に若くて外傷後の身体症状が軽度の患者では,外見からは高次脳機能障害がわかりにくいために診察室でとらえることは難しく,実生活や社会生活のなかで初めて問題が顕在化することが少なくないことに留意する.

◆病態と診断

A病態

・頭部外傷の受傷後,慢性期になっても何らかの神経症状や精神症状を呈する状態である.

・わが国における頭部外傷の原因としては,転倒・転落,交通事故,スポーツ外傷などが多い.

・具体的な症状として,頭痛,めまい,疲労感,睡眠障害,高次脳機能障害(記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害,感情障害,性格変化など)などが挙げられる.

・そのほかの頭部外傷後遺症として,外傷性頸部症候群,外傷性低髄液圧症候群,慢性硬膜下血腫,外傷性てんかん,慢性外傷性脳症などが挙げられる.

B診断

1.脳振盪・脳振盪後症候群

・脳全体が揺り動かされたことにより生ずる意識消失,健忘や精神心理学的異常,頭痛,めまいなどの身体的自覚症状を主とする一過性の脳機能障害である.

・通常は頭部CTで明らかな異常所見を認めず,有効な他覚的診断法がないため,臨床症状を診断基準に照らし合わせて診断することが多い.なおスポーツ脳振盪の過半数は意識消失を伴わないとされる.

2.高次脳機能障害

・脳損傷に起因する認知障害全般を指し,巣症状としての失語,失行,失認のほか記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害などが含まれる.

・国立障害者リハビリテーションセンターの作成した「高次脳機能障害 診断基準ガイドライン」に従って,臨床症状およ

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