今日の診療
治療指針

急性散在性脳脊髄炎
acute disseminated encephalomyelitis(ADEM)
水野昌宣
(済生会宇都宮病院・脳神経内科)

頻度 あまりみない

GL多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン 2017

ニュートピックス

・COVID-19感染後,COVID-19ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎の症例が報告された.

治療のポイント

・緊急性のある疾患であり,疑った時点ですみやかに免疫療法を施行する.

◆病態と診断

A病態

・自己免疫性炎症性脱髄性中枢病変が多発する.

・すべての年齢で発症する(主に3~9歳に多い).

・急性発症で単相性が多い.

・主に感染後予防接種のあと数日~数週間後に発症する.

・発熱や頭痛,意識障害,高次脳機能障害,脳神経症状,錐体路症状,感覚障害,てんかん発作など中枢神経症状を認める.

B診断

・小児についてはIPMSSG(Inter-national Pediatric MS Study Group)の2012改訂診断基準がある.成人の基準はない.

・診断を確定する血液・脳脊髄液マーカーはない.

・他疾患の除外目的で,オリゴクローナルバンド,アクアポリン4抗体,細菌培養,ウイルスの抗体価やPCRなどを測定する.

・頭部や脊髄MRIで脱髄病変が多発する.

・一部の症例にミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質(MOG:myelin oligodendrocyte glycoprotein)抗体が検出される.

◆治療方針

 保険適用になる薬剤はない.他疾患を除外し,早急にステロイドパルス療法を行う.

A急性期の治療

Px処方例 下記の1)を用いる.脳浮腫が強い場合は1)と2)を併用する.1)を終了後,3)に移行する.

1)メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール)注 1回1,000mg 1日1回 1回1時間以上かけて点滴静注 3~5日を1クールとする保外

2)濃グリセリン・果糖(グリセオール)注 1回200mL 1日3回 1回1~2時間かけて点滴静注

3)プレドニゾロン(プレドニン)錠(5mg) 

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