今日の診療
治療指針

フィッシャー症候群
Fisher syndrome(FS)
古賀道明
(山口大学大学院准教授・臨床神経学)

頻度 あまりみない

GLギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2013

治療のポイント

・他疾患と誤診しやすく,鑑別診断が最も重要である.

・治療の主たる目的は重症化予防で,急性進行期には積極的に免疫療法を考慮する.

・四肢筋力低下や球麻痺,意識障害,不整脈などの出現に注意する.

◆病態と診断

外眼筋麻痺運動失調・腱反射消失を3徴とする免疫介在性ニューロパチーである.

ギラン・バレー症候群の臨床亜型であり,約1/3の症例で経過中に四肢筋力低下や意識障害(この場合はビッカースタッフ脳幹脳炎に移行したと理解される),球麻痺などを呈することで重症化する.

・自己抗体として血中にIgG型抗GQ1b抗体が約9割の症例で検出され,診断マーカーとして有用である(保険収載されている委託先は限られる).

・ビタミンB1 欠乏症(ウェルニッケ脳症)や脳幹部疾患(血管障害など),重症筋無力症などとの鑑別を要する.

◆治療方針

 自力歩行ができない場合には,ギラン・バレー症候群の治療法にならい,すみやかに免疫グロブリン大量静注(IVIg:intravenous immunoglobulin)療法などの免疫療法を開始する.そうでない場合にも経過とともに自立歩行不可となった時点で免疫療法を行う.発症から2週間程度は症状が進行し,四肢麻痺や意識障害,球麻痺,自律神経障害(血圧変動や不整脈)を呈するリスクがあり,注意深く観察する.こういった症候がみられれば,すみやかに免疫療法を開始する.これらの合併がなくとも,早期の社会復帰が必要な場合や四肢末梢部に感覚障害がある場合,進行が急速な場合(発症2~3日で眼球固定や自立歩行不能など)では免疫療法を開始してもよい.

A免疫療法

1.IVIg

Px処方例

 ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン(献血グロベニン-I)注 1回400mg/kg 1日1回 5日間 点滴静

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