頻度 よくみる
治療のポイント
・発作時は筋クランプを生じている筋を伸展させることで,すみやかに解除可能である.
・再発予防として,日常的な,アキレス腱から下腿後面のストレッチ運動,有酸素運動,マッサージ,四肢の保温が推奨される.
◆病態と診断
A病態
・筋クランプは不随意に起こる骨格筋の有痛性筋けいれんであり,下腿筋で起こりやすい.
・脳,脊髄などの疾患による中枢神経の異常興奮や脊髄前角細胞への脱抑制,末梢の運動・感覚両神経系の過剰興奮と機能低下が関与している.
・60歳以上の高齢者では夜間の筋クランプが多い.
・筋クランプを生じる疾患は多様であり,脱水症,代謝性疾患(低Ca血症,低Mg血症,低K血症,腎不全,肝硬変,糖尿病,甲状腺機能低下),運動ニューロン疾患,筋疾患,パーキンソン病,末梢神経障害,薬剤性などがある.
B診断
・筋クランプは激痛を伴う筋収縮と硬化で安静時または運動時に突然始まり,数分ほど持続して徐々に終息するが,しばらく疼痛が持続することもある.
・Ca拮抗薬,β遮断薬,HMG-CoA還元酵素阻害薬,利尿薬,抗精神病薬,H2 ブロッカー,抗癌剤などによる薬剤性も鑑別する.
◆治療方針
妊婦では,児への影響が少ないMg製剤やビタミンB群剤が推奨される.原因疾患がある場合は,その治療も同時に行う.薬剤性筋クランプが疑われる場合は原因薬剤を減量・中止する.
A漢方薬
高齢者の夜間の下肢筋クランプに,就寝前の芍薬甘草湯が有用である.透析患者の透析中や透析後の筋クランプにも有用である.
Px処方例
芍薬甘草湯薬エキス顆粒(2.5g/包) 1回1包 1日1回 就寝前,または1日3回 食前
B筋弛緩薬
バクロフェン,チザニジン,エペリゾンがよく用いられる.
Px処方例 1)から開始し,効果がなければ2)あるいは3)に変更する.
1)バクロフェン(リオレサール薬)錠 1回5~10mg 1日3回 毎食後保外
関連リンク
- 治療薬マニュアル2023/芍薬甘草湯
- 治療薬マニュアル2023/バクロフェン《ギャバロン リオレサール》
- 治療薬マニュアル2023/チザニジン塩酸塩《テルネリン》
- 治療薬マニュアル2023/エペリゾン塩酸塩《ミオナール》
- 治療薬マニュアル2023/カルバマゼピン《テグレトール》
- 治療薬マニュアル2023/ガバペンチン《ガバペン》
- 治療薬マニュアル2023/クロナゼパム《ランドセン リボトリール》
- 治療薬マニュアル2023/メキシレチン塩酸塩《メキシチール》
- 治療薬マニュアル2023/酸化マグネシウム(略称:カマ,カマグ)《重質酸化マグネシウム 酸化マグネシウム》
- 治療薬マニュアル2023/合剤 《ビタメジン》
- 治療薬マニュアル2023/タウリン《タウリン》
- 今日の治療指針2023年版/オランザピン
- 今日の治療指針2023年版/メトクロプラミド
- 今日の治療指針2023年版/低Mg血症
- 今日の治療指針2023年版/錐体外路症状
- 今日の小児治療指針 第17版/小児交互性片麻痺