今日の診療
治療指針

脳血管障害による失語症のリハビリテーション
rehabilitation of post-stroke aphasia
鈴木匡子
(東北大学大学院教授・高次機能障害学分野)

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治療のポイント

・失語とそれ以外の言語・発話障害,高次脳機能障害を,症状,病巣から鑑別する.

・言語聴覚士に病態,病巣,治療方針などの医学的情報を伝え,相互に緊密な連携をとりながらリハビリテーションを進める.

・失語型を適切に診断し,障害されている言語機能に応じた言語聴覚訓練を進める.

・合併する高次脳機能障害(全般性注意障害など)がリハビリテーション,ADLに影響するので,適切に評価して,総合的に個々人の目標を決める.

◆病態と診断

A病態

言語優位半球のシルビウス裂周囲領域が言語機能に重要な部位であり,この領域の病巣により失語症が生じる.脳血管障害の中では左中大脳動脈領域梗塞が最も多い.

・前頭葉病巣では発話障害の目立つ運動性失語,側頭頭頂葉病巣では理解障害の目立つ感覚性失語となることが多い.左視床・基底核病変でも失語症が生じることがある.

・脳血管障害によるほかの症状と同様に,失語症も急性期が最も重度で徐々に回復する.言語療法による機能改善はコミュニケーション能力,発話,読み書きにみられやすい.本邦での検討では,言語療法は発症後1年間は効果があり,それ以降も効果は小さくなるものの有用と考えられる.

B診断

・失語症は獲得された言語機能が脳損傷により障害された状態であり,言語の表出/理解に障害がみられる.

・以下の状態と鑑別を要する.鑑別には上述の病巣部位も参考になる.

1)構音障害:舌,口唇などの運動障害を認める.読み書きの障害はない.

2)意識障害(せん妄を含む):注意が持続せず,症状に変動があり,言語だけでなく行動としてもまとまりがない.軽いせん妄で書字障害,言い誤りなどがみられる.

3)認知症:言語を介さない認知的行為(道具使用,状況判断など)も障害される.

◆治療方針

 失語症のリハビリテーションの目的は,コミュニケーション能力を高め,環境に適応できるように支援することである.

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