今日の診療
治療指針

精神疾患 最近の動向
水野雅文
(東京都立松沢病院・院長)

 精神科医療の場が入院医療中心から地域外来医療中心へと移行する流れは,勢いを増している.2022年度の診療報酬改定においてもその傾向は引き継がれている.すなわち精神科医療の「地域移行の推進」「機能分化と連携」や「多様な精神疾患患者への支援」などをさらに後押しする内容となっている.安心して地域で生活するには,いざというときの救急医療体制の充実が求められるが,これに対しては質の高い救急・急性期医療,なかでも緊急の患者に対する体制として精神科救急医療体制加算が新設された.また医師配置による加算では,クロザピン使用体制の条件が付加された.一方,地域においては療養生活継続支援加算が新設され,地域定着の推進と多職種による包括的支援マネジメントに基づく相談・支援に対して新たな評価が加わった.

 2022年6月には「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」(→図解)の全国的な実現に向けた具体的かつ実効的な仕組み,体制について検討し,精神障害者の入院にかかわる制度のあり方,患者の意思決定支援および患者の意思に基づいた退院後支援のあり方などについて検討を行う場としての「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」の報告書が示された.精神障害については,本人の病状の変化が障害の程度に大きく影響するため,病状の変化に応じ,医療だけでなく,福祉,介護などの多様なサービスを,身近な地域で切れ目なく受けられるようにすることが必要との認識から,精神保健に関する市町村などにおける相談支援体制,入院患者への訪問体制,医療保護入院のあり方,隔離と身体的拘束,人員配置,虐待防止などについての検討が重ねられた.

 わが国における認知症患者は2025年には700万人を超すことが予測されるなか,抗認知症薬の開発への期待は大きい.PETやfMRIあるいは光トポグラフィー(NIRS:near-infra

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