今日の診療
治療指針

森田療法
Morita therapy
舘野 歩
(東京慈恵会医科大学准教授・精神医学)

A森田療法とは

 森田療法とは,1919年に東京慈恵会医科大学精神医学講座初代教授・森田正馬が創始した神経症性障害に対する精神療法である.神経症性障害の根源にある不安の裏には何かしら「~したい」欲求(森田学派では「生の欲望」とよぶ)が潜んでいると理解する.不安と欲求の両方があって自然であるのに,一方の不安を排除しようとすればするほど悪循環にはまってしまう.この悪循環から脱出するには,不安を排除せずそのままにして,不安の裏側にある「~したい」欲求を建設的な方向へ生かすことが重要である.これを端的な言葉で「あるがまま」という.ただこれはあくまで治療目標であって,すぐに患者が行動を起こせるわけではない.この治療目標へ向かって,治療者と患者の対話を通して進んでいくのが外来森田療法である.

B治療対象

 元来のパニック症,広場恐怖症,全般性不安症,社交不安症,強迫症,身体症状症,病気不安症から,非精神病性ひきこもり,うつ病遷延例,心身症(アトピー性皮膚炎など),癌や難病に対する生きがい療法,慢性疼痛へと応用されている.

C外来森田療法の基本的構成要素

 外来森田療法の基本的構成要素を示す.

1)感情の自覚と受容を促す

2)生の欲望を発見し賦活する

3)悪循環を明確にする

4)建設的な行動を指導する

5)行動や生活のパターンを見直す

 2)の患者自身が何をしたいか膨らませていくことが治療導入で大事になってくる.治療の進展のなかでは主に1)~3)を明確にしつつ,徐々に4)建設的な行動を促していく.そして治療後半で5)の話題が出てくる.

 治療が終わり,治療の効果をみるには,①症状とそれに伴う苦痛の軽減,②生活・行動の変化,③自己の受容と洞察という観点で診察する.

D日常診療での活かし方

 森田療法でどのような欲求(生の欲望)が潜んでいるかの発掘の例を示す.

1)社交恐怖症:「人前で話すと緊張してしまいます」という不安

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