今日の診療
治療指針

内観療法
Naikan therapy
小澤寛樹
(長崎大学大学院教授・精神神経科学)

ニュートピックス

・精神科専門医の行動目標のガイドライン(精神科専門医制度規則)で,理解すべき日本発祥の精神療法として「森田療法」とともに取り上げられたのが「内観療法」である.これに携わる「認定医師」「認定心理療法士」「認定内観面接士」は,日本内観学会による学会認定資格となっている.

・最近ではこうした東洋由来の精神療法と,「認知行動療法」や「マインドフルネス」といった西洋の精神療法との弁証法的試みとして研究された新たな治療法に,関心が向けられている.

治療のポイント

・内観療法は,両親,兄弟などの身近な人に「お世話になったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」の内観3項目について,自己の態度や行動を年代別に時間の流れに沿って想起していく精神療法である.

・内観研修所や病院で1週間程度集中して終日内観する「集中内観」と,日常生活のなかで内観3項目を通して自己分析を行う「日常内観」(分散内観)がある.

・この治療は治療枠や手順が明確であり,人生観,価値観に関連する俯瞰的な視点で行う精神療法が可能となる.

・内観療法は精神修養や自己啓発から始まり,アスリートのメンタルトレーニングといった健常者の精神衛生保持にも有効な手段といえる.

・内観の様式を尊重し,他の精神療法と相通じる要素を組み合わせる試みも行われてきている.

A治療構造と技法

 内観療法(内観法)は,1940年代に吉本伊信が創始した日本発祥の精神療法である.浄土真宗の修行法を母体としているが,吉本は宗教色を完全に払拭し,内観法を確立した.1978年に内観学会(現 日本内観学会)が発足.現在では中国,韓国,欧米に普及し,特に中国では保険適用もなされている.

 内観療法は基本,内観研修所に1週間こもって行う.部屋の片隅に屏風を直角に立て,畳半分の空間に終日1人で静座する.そこで,生まれてから現在までの自分とかかわりの深かった人々(母,父,

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