治療のポイント
・身体疾患による精神障害は,身体疾患そのものの影響で精神症状が出現するものを指し,身体疾患に対する心理的反応は含まない.
・精神症状が身体疾患に起因するものかどうかを鑑別するためには,適切な検査を行うことが重要である.
・治療の原則は原因となっている身体疾患の治療を行うことであるが,精神症状はしばしば治療の阻害要因になるため,対症的に向精神薬投与が必要になることが多い.
・向精神薬を投与する場合には副作用が出やすい傾向があるため,注意する.
・身体疾患治療後,精神症状が改善したら向精神薬を漸減中止する.
◆病態と診断
A病態
1.疾患概念
・身体疾患による精神症状は,頭部外傷,脳炎,脳血管障害など脳に原因があるもの(1次性)と,脳以外の全身性疾患による脳への侵襲によるもの(2次性)に分けられる.前者を器質性精神障害,後者を身体疾患による精神障害とよぶことが多い.
・病態に関しては不明な点が多いが,身体疾患による精神障害では原因疾患によらず,おおむね共通した症状,経過を呈する.急性期には軽度の意識障害を背景に不穏,せん妄,幻覚妄想状態がみられることが多く,回復期には情動不安定,不安,抑うつ状態などがみられることが多い.慢性期には認知機能障害,人格変化などを後遺することもある.
2.内分泌疾患
・ホルモンは全身の臓器に対する生理作用をもつため,内分泌疾患は脳にも影響を与え精神症状をきたしやすい.
・甲状腺機能亢進・低下症,副甲状腺機能亢進・低下症,クッシング症候群,副腎皮質機能低下症,褐色細胞腫,インスリノーマなどが代表的な疾患である.
・内分泌疾患では抑うつ状態をきたすことが多い.褐色細胞腫,インスリノーマでは交感神経過活動を背景にパニック障害のような不安発作をきたすことがある.
3.代謝障害および栄養障害
・肝不全,腎不全,電解質異常,低血糖や高血糖,高アンモニア血症,ポルフィリン症など,
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