今日の診療
治療指針

アルコール依存症
alcohol dependence
吉本 尚
(筑波大学准教授・地域総合診療医学)

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GL新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン(2018)

ニュートピックス

・飲酒量低減薬であるナルメフェン(セリンクロ)の処方が,2021年10月より「アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修」の受講で可能となった.

・2022年2月にICD-11の診断基準が利用可能となり,飲酒行動のコントロール障害,飲酒中心の生活,生理学的特性の3項目中2項目を満たすと診断可能となった.

治療のポイント

・アルコール専門医療機関だけではなく,内科,プライマリ・ケアでの対応が求められている.

・アルコール依存症の治療は,断酒の達成とその継続を目標とすることが原則である.

・重症度や患者の希望などを考慮し,断酒治療か減酒治療かを適切に選択し,治療の継続をはかる.

◆病態と診断

A病態

・アルコール依存症は,アルコールの反復使用や継続使用によって生じる,アルコール使用の制御障害である.

・ドーパミンやGABA,セロトニン,エンドルフィンといった脳内神経伝達物質がかかわる,報酬系などの神経回路変化によるものと考えられている.

B診断

・飲酒行動に関する10の質問からなるAUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)を用いてスクリーニングを行う.

・確定診断は,日本では主にICDの診断基準が用いられる.2022年2月からICD-11の診断基準が利用可能である.

◆治療方針

 アルコール依存症の治療目標は,①飲酒量のコントロール,②合併する身体・精神問題の予防・改善の2点を行い,社会機能を改善することである.治療中断率が高く,治療の継続が最も重要である.

 また,日本アルコール・アディクション医学会,日本アルコール関連問題学会などによる「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き」,「飲酒量低減治療

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