今日の診療
治療指針

薬物依存症と治療プログラム
drug dependence and treatment program
宮田久嗣
(東京慈恵会医科大学客員教授・精神医学)

GL新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン(2018)

◆病態と診断

A薬物の種類

・ここでいう薬物とは,①違法薬物(大麻,有機溶剤,覚醒剤,コカイン,ヘロインなど),②危険ドラッグ(ハーブ,リキッド,パウダーなど),③市販薬(ブロンなどの鎮咳去痰薬,ナロンなどの解熱鎮痛薬),処方薬(ベンゾジアゼピン系の抗不安薬,睡眠薬),などをいう.

B診断

・過去1年間に,薬物への強い欲求があり,社会活動(仕事,学業,家事)や心身に支障が生じているにもかかわらず,薬物使用をやめられない場合に薬物依存を考える.また,耐性(薬物効果の減弱のために摂取量が増えていく現象)や離脱症状(減薬や断薬によって,有害な精神・身体症状が生じる現象)の存在も重要な情報となる.

・診断基準は,一般的にICD-11(WHO)とDSM-5(米国精神医学会)が用いられる.ICD-11では“〇〇依存”,DSM-5では“〇〇使用障害”の診断名となる.

・ベンゾジアゼピン系薬物(抗不安薬,睡眠薬)の臨床用量依存とは,ほかの薬物依存とは異なり強い欲求はなく,使用を中止したときにはじめて不安,不眠などの離脱症状が生じ,使用を中止しなければ何の問題もない特異な依存である.治療は,短時間作用型では1日量の1/4ずつ2~4週間ごとに漸減し,長時間作用型では1~2か月ごとに投与間隔をあけていくなどの漸減法を用いる.

◆治療方針

 最も確実な治療目標は断薬である.ただし,市販薬や処方薬の依存では,使用量低減(減薬)や依存性の低い薬物への変更も治療目標となる.

 依存症では治療の継続が重要である.例えば,患者が断薬を受け入れず,減薬を主張して譲らない場合には,治療からの脱落を避けるために当面の目標を減薬として,うまくいかなければ断薬に切り替える.

 以下のような治療技法を用いて,患者の治療への姿勢を支援する.

A関係づくり

 患者は,薬物関連の問題で

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