今日の診療
治療指針

ギャンブル障害
gambling disorder
佐藤 拓
(成瀬メンタルクリニック・院長(東京))

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治療のポイント

・金銭問題などをきっかけに治療や支援につながったタイミングでは,自省の念が強まっているが,その思いだけで長期間ギャンブルの問題を生じさせないことは難しい.

・ギャンブルのコントロールが困難となる原因を分析し,問題を抱える本人,ご家族,支援(治療)者が解決に向けた取り組みを共有する.このことで,ギャンブルの問題が生じても,取り組みの変更や改善に意識が向き,周囲が本人を否定せずに接することができる.

◆病態と診断

A病態

・ハンス・セリエのストレス学説(1936年)では,生体が外部から対人関係における負担などの精神的緊張(ストレッサー)を受けたとき,これらの刺激に適応しようとして,生体に一定の反応(ストレス反応)が起こるとされている.この学説とカンツィアンらの自己治療仮説(2008年)をもとにギャンブル障害をとらえると,主に対人関係問題で生じた精神的緊張を和らげるための自己治療的ギャンブル行為がストレス反応に該当し,そのコントロールが困難となるという病態が考えられる.

B診断

・世界保健機関(WHO)の発行するICD-10の診断ガイドラインに記載されている「不利な社会的結果を招くにもかかわらず,持続し,しばしば増強する」特徴のあるギャンブル行為がみられる場合に診断される.

・診断が該当する場合でも,一時的に問題が消失する経過が生じることがある.

◆治療方針

 われわれは,対人関係において自らがどのような負担を受けているかを考えることは少ない.生活のなかで果たさなければならない義務感などを優先することにより,その負担は忘れ去られがちである.ギャンブルの問題に関するコントロール不全を生じないためには,①どのようなことが自らに精神的緊張をもたらしているか(ストレッサーは何か),②(ストレス反応としての)自己治療の選択肢がギャンブルだけに限定されていないか,という振り返りを継

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