頻度 割合みる
治療のポイント
・被疑薬の減量もしくは中止が原則である.
・①早急に対応を要する,②被疑薬をすみやかに減量・中止できない場合,対症的に薬物療法が必要となる.
◆病態と診断
A病態
・薬剤により病態生理は異なる.ドパミンやセロトニンなどの神経伝達物質への影響などが指摘されているが,十分に解明されていない.
・せん妄,幻覚・妄想,躁,抑うつ,不安など幅広いスペクトラムの精神症状が出現するが,薬剤によって出現しやすい症状がある(図).
・ハイリスクの薬剤は副腎皮質ステロイド,オピオイド,ベンゾジアゼピン系薬剤,抗コリン薬,麻酔薬など.
・ベンゾジアゼピン系薬剤は離脱によってもせん妄などが生じる.
・精神症状は用量依存性であるものが多い.
・市販薬でも精神症状が生じる.特に乱用が生じるものとして,エフェドリン,コデインなどを含む鎮咳去痰薬(ブロン,特に内用液剤)や総合感冒薬(パブロン),ブロムワレリル尿素を含む鎮静薬(ウット)や解熱鎮痛薬(ナロン)などがある.
B診断
・①精神症状が薬剤の開始・増量後に出現していること,②その薬剤に精神症状を引き起こすエビデンスがあることが診断には不可欠.
・除外基準は,①精神症状が薬剤の開始に先行して存在すること,②精神症状が薬剤の中止後もかなりの期間持続すること(例えば1か月以上),③精神症状を引き起こすほかの原因があること(原疾患・併存疾患によって生じる2次性の精神障害,闘病に伴う心理反応,既存の精神疾患など).
・離脱によるものは,薬剤の急激な減量・中止後に生じる.
◆治療方針
A被疑薬の減量・中止
可能な限り,被疑薬を減量もしくは中止する.離脱が疑われる場合は被疑薬を再開する.
B薬物療法
主症状に応じて薬剤を選択する(適応外使用).
1.せん妄,幻覚・妄想,躁状態
Px処方例 下記のいずれかの抗精神病薬を用いる.
1)クエチアピン(セロクエル薬)錠(25mg)
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