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治療のポイント
・せん妄は医学的疾患や物質などに起因する意識障害により生じるため,意識障害の原因となる疾患や物質をすみやかに特定し治療を進める.
・せん妄を悪化させる要因を解消し,予防や症状の改善をはかる.
・せん妄で生じる興奮や幻覚に対し静穏化を目的とし薬物療法を行う場合,副作用が生じやすいため慎重に行う.
◆病態と診断
A病態
・せん妄は,医学的疾患や物質(依存物質や医薬品)などの使用のために生じた軽~中等度の意識障害(混濁)により,気分の不安定性,失見当識や幻覚など多彩な精神症状を呈する病態である.
・せん妄は,一般病院入院患者の6~56%,術後高齢者の15~53%,ICUでは70~87%に発生する.また,入院中のせん妄患者の40%が死亡すると報告されている.
B診断
・せん妄は以下により診断される.
1)注意の障害(注意の集中,維持や転換する能力の低下)や意識の障害(環境に対する見当識の低下)がある.
2)数時間~数日の短期間で出現.日内変動する傾向がある.
3)記憶欠損,失見当識,言語や知覚などの認知の障害を伴う.
4)病歴,身体診察,臨床所見から,医学的疾患,物質などにより引き起こされたという証拠がある.
・なお,臨床症状から,せん妄は,気分の不安定性,焦燥や興奮などが前景に立つ「過活動型せん妄」と,不活発や嗜眠が前景に立つ「低活動性型せん妄」と,「混合型せん妄」に分類される.
◆治療方針
意識障害の原因となる疾患や物質を特定し治療を進める.せん妄を悪化させる要因を解消することにより,症状の予防や改善をはかる.
せん妄は基礎疾患をもつ高齢者に生じやすい.静穏化を目的として抗精神病薬を処方する場合,副作用を熟慮し慎重に行う.
Aせん妄を悪化させる要因の解消
身体拘束はエコノミー症候群などに加え,せん妄のリスクを上げるため最小にとどめる.カレンダーや時計を置く,眼鏡や補聴器を用いるな
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