今日の診療
治療指針

統合失調症(維持療法とリカバリー支援)
schizophrenia(maintenance treatment and supporting recovery)
岩田和彦
(大阪府立病院機構大阪精神医療センター・院長)

GL統合失調症薬物治療ガイドライン(2016)

治療のポイント

・維持療法を行う回復期~安定期では,疾病の再発や精神症状の再燃を防ぐとともに,社会機能の改善をはかることがポイントとなる.

・記憶,注意,実行機能などの認知機能の障害によって自立生活が困難になるため,薬物療法と心理社会的治療を併用した治療により改善をはかる.

・真のリカバリーを達成するために,本人のみならず家族にも疾病の理解と治療への協力を促すように働きかける.

◆病態と診断

・統合失調症では幻覚や妄想などの急性期の精神病症状が改善しても,その後の回復期~安定期において意欲低下や感情の平板化などの陰性症状や,記憶,注意,実行機能などの認知機能領域の障害が持続しやすい.その結果,社会機能の低下を引き起こし,地域生活や就労の場面で不適応を生じやすくなる.

・さらに服薬アドヒアランスの低下や,環境から受けるストレスへの不適切な対処により,再発のリスクが増加するので注意が必要である.

◆治療方針

 治療の最終的な目標はリカバリーの達成である.「リカバリー」とは,単に精神症状の軽快だけではなく,精神疾患をもちながらもそれにコントロールされず,自分自身の手に人生の主導権を取り戻した状態を意味する.

 そのためには,薬物療法の継続と,社会機能の改善に向けた心理社会的治療を併用することが必須であり,残存する精神症状,社会機能の程度,本人の望む生活や将来の希望などを考慮しつつ,薬剤や心理社会的治療プログラムの組み合わせを検討することが重要になる.

A再発予防のための薬物療法

 適切な薬物療法の継続により,再発リスクが低くなることは実証されている.回復期~安定期には精神病症状に対する効果に加え,服薬アドヒアランスを維持することが欠かせないため,過鎮静や錐体外路症状などの副作用の少なさや,服用回数なども考慮し,第2世代抗精神病薬から薬剤を選択することが望ま

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