今日の診療
治療指針

パニック症と全般不安症
panic disorder and generalized anxiety disorder
池田暁史
(大正大学教授・臨床心理学科)

Ⅰ.パニック症

頻度 よくみる

治療のポイント

・発作の頻度や重症度,患者の希望などを考慮し,薬物療法の導入を検討する.

・発作だけでなく予期不安のコントロールが重要である.

◆病態と診断

A病態

・反復するパニック発作を特徴とする.

・パニック発作とは,動悸,呼吸困難感を中心に,冷汗,震え,嘔気などの自律神経症状が突然生じるものをいう.その際に「このまま死んでしまうのでは」という死の恐怖や「このままおかしくなってしまうのでは」という発狂の恐怖とよばれる強い不安感,恐怖感を伴う.

・「また発作が起こったらどうしよう」という予期不安を伴う.また自分の意思で自由に外に出ることのできない状況(電車の中や映画館など)を恐れる広場恐怖を伴うことも多い.

B診断

・上記の症状が繰り返されていることを確認する.

・心肺機能や甲状腺機能などの器質因を除外する.

◆治療方針

 パニック症の治療の目標は,①パニック発作の抑制,および②予期不安や広場恐怖の軽減,である.①に関しては薬物療法でかなりの効果が期待できる.一方で②に関しては薬物療法の効果は限定的であり,認知行動療法の併用が望ましい.またパニック発作で受診する患者のなかにはうつ病などほかの精神疾患が主診断となるものもいるので,留意が必要である.

Aパニック発作の抑制

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第1選択薬となる.ただし効果が現れるまで10日~2週間程度かかるので,それまでの間,ベンゾジアゼピン系抗不安薬を併用することもある.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)パロキセチン(パキシル)錠(10mg) 1回1~3錠 1日1回 夕食後

2)セルトラリン(ジェイゾロフト)錠(25mg) 1回1~4錠 1日1回 夕食後

 少量から投与し経過をみながら慎重に増量していくこと.服薬を終了する場合も時間をかけて漸減していくこと.

B予期不安および広場恐怖の軽減

 

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