Ⅰ.レム睡眠行動障害(RBD)
頻度 よくみる(中・高年男性)
治療のポイント
・治療目標は夢見時の叫び声や暴力,転倒による怪我のリスクを軽減させることである.
◆病態と診断
A病態
・通常,レム睡眠中は夢見が活発化するのに伴い,骨格筋の緊張が著しく減弱するため,夢内容が行動に現れることはない.しかし,RBDではレム睡眼中の骨格筋の緊張が維持されるため,夢内容に沿った行動が現れる.
・50歳以降の男性に多く,パーキンソン病やレビー小体病などのシヌクレイノパチー,頭部外傷既往者に高頻度に認める.
・精神疾患に合併することも多い.
・夢内容は悪夢(喧嘩・追いかけられるなど)が多く,夢内容と一致した暴力的行動(叫ぶ・殴る・蹴るなど)により,本人もしくは同居者(家族)が怪我をする危険性がある.
・家族の声がけにより比較的容易に覚醒し,多くは夢内容を想起可能である.
・心理ストレス,アルコール,抗うつ薬やβ遮断薬,オピオイド系鎮痛薬が増悪因子となる.
B診断
・RBDは病歴により暫定診断が可能だが,ビデオ睡眠ポリグラフを実施し,レム睡眠中の異常行動を確認し,筋緊張消失を伴わないレム睡眠(RWA:REM sleep without atonia)が記録されれば診断が確定する.
◆治療方針
A寝室環境の整備
同居者と寝室を分ける.転倒リスクを軽減させるためにベッドを布団に変更するなど,寝室の環境整備を行う.
B薬物療法
Px処方例
クロナゼパム(リボトリール薬)錠(0.5mg) 1回0.5~2錠 1日1回 就寝前保外
!注意 保険適用外であること,筋弛緩作用による転倒リスク,併存する閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:obstructive sleep apnea)増悪リスクに留意する.
C代替療法
Px処方例
メラトニン(メラトベル薬)顆粒小児用 1回3~12mg(成分量として) 1日1回 就寝前保外
!注意 国際的なガイドラインでは