今日の診療
治療指針
救急

精神科救急事態への対応
emergency psychiatry
杉山直也
(沼津中央病院・院長(静岡))

頻度〔精神科救急医療体制整備事業による年間の都道府県別人口1万対時間外(夜間・休日)入院件数は1.01~1.74(2004~2015年の全国中央値)〕

GL精神科救急医療ガイドライン2022年版

ニュートピックス

・精神科救急医療体制は「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」における重要な基盤として位置づけられている(厚生労働省:「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」資料より).

・薬物療法は,エビデンスレベルの高いランダム化試験のみならず,リアルワールドデータが注目されつつあり,統合失調症などの機能性精神疾患に対する救急・急性期介入後の維持や再発防止を目的とした持効性注射剤(LAI:long acting injection)の意義が高まっている.新規薬剤の開発は,化合物の差のみならず投薬経路や剤形(注射剤,舌下錠,貼付剤)の違いにも及び,多様な選択肢が可能となった.

◆病態と診断

A状況カテゴリー

1.身体疾患に起因する精神症状と精神疾患を有す患者に生じた身体トラブル

・救急ニーズの本態が身体疾患であり,当該診療科による介入・専門ケアが必要だが,精神症状のために管理や対応に窮する場合.

2.精神疾患の初発・増悪

・精神科的な重症病態であり,精神科医と医療チームによる専門ケアが必要な場合.

3.背景要因による危急な介入ニーズ

・一定の障害を残遺する精神疾患患者であり,支援の下に地域生活が成立していたが,支援者・家人,担当医療機関などに何らかの事情が生じた場合など.

B病態

・以下1)~3)などの危機状況(クライシス)で,多くは現実認識や判断力に支障をきたしている.

1)他害のおそれ(他者への攻撃性,破損的行動,迷惑行為など)

2)自傷のおそれ(自殺企図,自傷行為,自殺念慮,自傷衝動)

3)急速な社会機能やセルフケア機能の不全状態

・精神科救急のニーズは,頻度順に,幻覚・妄想状

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