治療のポイント
・焦燥感や興奮が目立たないせん妄の場合,薬物療法を避ける.
がん患者に頻度の高い精神医学的問題は,適応障害,うつ病,せん妄であり,30~40%程度にいずれかが認められる.身体状態が悪化し入院を要する終末期ではせん妄の頻度が最も高い.
Ⅰ.適応障害
◆病態と診断
・多くは,がんに伴う心理的ストレスに起因する不安,抑うつ状態である.
◆治療方針
主治医を含めた医療チームの支持的なケアが不可欠であり,その中心は適切な身体症状緩和と医療者との良好な信頼関係を基にした共感的なコミュニケーションである.必要に応じて最低限の薬物療法を併用する.
A薬物療法
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
Px使い分けのポイント
・肝機能障害がある場合は,グルクロン酸抱合のみで代謝される2)を用いる.
!不適切処方:漫然投与 効果が認められない場合は漫然と投与せず中止する.
Ⅱ.うつ病
◆病態と診断
・がんによる喪失体験に続発する重いうつ状態である.
・以下の症状のうち,①あるいは②を必須とし,全部で5項目以上が同時に2週間以上継続した場合に診断される.①抑うつ気分,②興味・喜びの低下,③食欲低下(亢進)/体重減少(増加),④不眠(過眠),⑤焦燥感・制止,⑥易疲労性・気力減退,⑦罪責感・無価値感,⑧思考・集中力低下/決断困難,⑨希死念慮.
◆治療方針
前述の支持的ケアに加えてより積極的な精神療法および適宜薬物療法も併用する.
A薬物療法
1.軽症の場合
Px処方例
アルプラゾラム(ソラナックス薬)錠(0.4mg) 1日1~3錠を2~3回に分服
2.中等症以上
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
1)エスシタロプラム(レクサプロ薬)錠(10mg) 1回1錠 1日1回
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