今日の診療
治療指針

精神科地域ケア
community-based psychiatric care
宮田量治
(山梨県立北病院・院長)

ポイント

・地域においては,本人の住まいを中心に地域の関係諸機関によりケア体制が構築される.

・「リカバリー」をキーワードに多職種でかかわる.

・かかりつけ精神科医療機関がある場合,地域担当のケースワーカーと連携し,地域諸機関の支援サービス利用を検討する.

A日本の精神科地域ケアの現状

 日本の精神科地域ケアは欧米より遅れているが,2021(令和3)年3月にまとめられた国の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」(「にも包括」)報告書は,平成期にはじまる「入院医療中心から地域生活中心」の理念を守り,今後の日本の精神科医療体制の方向性をいっそう明確にしたものである.

 長期療養の必要な精神障害に対して,日本の精神科医療は,2017(平成29)年6月時点において約17万人(全入院患者の6割強)に及ぶ長期入院者を抱えているものの,精神科治療・療養の場は,病院ではなく本人の「住まい」中心に展開していく地域ケアモデルへシフトしていくことが再確認されたものといえよう.本人の「住まい」には,当然ながら医師・看護師・コメディカルなどの多職種スタッフがいないため,住まいを取り巻く地域の諸機関(医療,障害福祉・介護サービス)が役割の明確化と重層的な連携によって支援体制を作り,その下支えあってこその,本人の社会参加,地域の助け合い,普及啓発であるとまとめられている.

 精神科地域ケアは欧米では当たり前のサービスだが,日本でも長期入院者の大多数を地域ケアに移行し大幅な病床削減に成功した病院が生まれており,療養は住まいで,入院医療は病状悪化時のみ,という実践が各地ですでに始まっている.

B精神科地域ケアの理念

 精神科地域ケアにおけるキーワードは「リカバリー」である.地域在住の重症例には「多職種チーム」や複数の支援者・支援機関がかかわることも増えているなか,地域ケアの目標は,症状安定や機能回復(

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