今日の診療
治療指針

減圧障害
decompression illness(DCI)
森松嘉孝
(久留米大学准教授・環境医学)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・厚生労働省労災疾病臨床研究班による本邦初の減圧症マニュアル「潜水業務における現場でできる応急対応に関する研究」が2022年3月に報告書として発表された.

治療のポイント

・まず,酸素投与と輸液を行う.

・高気圧治療を要する症例は専門病院へのすみやかな搬送を要するが,循環動態が不安定な場合は高気圧治療が難しい.

・ドクターヘリによる搬送を行う場合は,気圧の低下による病態悪化の危険を伴うことを把握しておく.

・レクリエーショナルダイバーの減圧障害では,救助を行った複数のダイバーの減圧障害にも留意する.

◆病態と診断

A病態

・潜水中に体内で溶けた窒素が,浮上時に体内からうまく排出されずに気泡となり,組織に詰まることで症状が出ることを減圧症,潜水時にブラなどの肺病変が破裂することによって動脈内にガスが流入することを動脈ガス塞栓とよび,両者を合わせて減圧障害と総称する.

B診断

・代表的症状は,関節・筋肉・頭・胸などの痛み,手足のしびれ感,全身のだるさであるが,症状は重複してみられることが多く,レクリエーショナルダイバーの減圧症では,約70%に四肢末梢のしびれ,チクチク感といった知覚障害がみられる.

・ダイビング後の膀胱直腸障害(排尿障害・排便障害)は減圧症を疑い,股関節・肩関節・膝関節の痛みは減圧性骨壊死の可能性を考え,MRI検査を行う.

・二次元超音波検査による心腔内気泡の検知は診断の一助となるが,下大静脈における気泡の未検知は,減圧症除外診断の補助となりうる.

◆治療方針

 高気圧酸素治療の要否について迷ったら,日本高気圧環境・潜水医学会のホームページで紹介されている最寄りの高気圧酸素治療施設へ問い合わせる.



文献

1) 山見信夫 : ドクター山見のダイビング医学. pp6-7, 南江堂, 2021

2) 小島泰史, 他 : 二次元超音波機器を用いた潜水後心腔内および下大静

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?